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2009年7月22日 (水)

【くろがね線を読み解く】第16回 ■レール輸送について

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■黒崎駅構内(旧 西八幡駅)でレール輸送用貨車「チキ」を入換中のディーゼル機関車。 2008年3月

 N社Y製鐵所の代表的な製品の一つに、軌条(鉄道用レール)がある。同社の製鉄所は全国各地に展開しているが、昨今の景気変動に伴う高炉の休止や稼動再開で新聞紙面を賑わせているO製鉄所やK製鉄所が、規格品大量生産主体の工場であるのに対し、Y製鉄所は特注品・高級品に特化した工場である[1]。中でも、同製鉄所製の軌条が有する優れた耐久性・耐摩耗性は、国内のみならず米国やカナダでも高い評価を得ており、最近ではロシアのモスクワ - サンクトペテルブルク間の高速鉄道用レールの全量受注にも成功している[2]。そのようなわけで、今回はレール輸送に着目してみることにする。

 まずレールは鋼鉄製であるから、圧延に至る工程は他の鉄製品とほぼ同じ筈である(詳細は、N社公開の図説を参照)。これを踏まえたうえで現在のくろがね線や構内鉄道を見てみると、次の点が指摘できる。

  • くろがね線の戸畑→八幡の輸送品目はスラブやブルームなどの鋼片(半製品)が中心で、高炉→転炉間の溶銑輸送はない(いわゆるトーピードカーが運行されることはない[3])。
  • 圧延以降の工程を担う条鋼工場は八幡地区にある。

 前者の背景には、工場の大規模な再構築により工程の直結化が進んだ結果、「高炉における製銑」から「転炉における製鋼」に至るプロセスが、すべて戸畑地区に集約されたことがある。後者については、下の写真をご覧いただくと一目瞭然である。条鋼工場は、構内用SLの保存されている八幡地区にある。

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■八幡地区で保存されている構内鉄道用SL。背後にあるのが条鋼工場。 2009年6月

したがってくろがね線では、レールの元となる半製品の輸送は行われているが、レール輸送はない[4]。構内鉄道とJR線は黒崎駅構内の分岐点(旧西八幡駅、以下西八幡駅と呼称する)で接続しており、レール幅(軌間)が同一である。このためレールの構内輸送には、JRの専用貨車(チキ)も使用されている[5]

 次に、レールが発送されるプロセスを確認しておく。工場で生産されたレールは、構内鉄道で各製品倉庫へ輸送され一時的に保管された後、然るべきタイミングで船舶ないし鉄道により発送される。Y製鐵所で生産されている鉄道用レールは70%が北米向けとなっており、国内向けは僅かである[6]。したがって、レールの多くはキャリアパレットカーなどの専用車によって輸出製品船積み用の岸壁に運ばれることになる。鉄道輸送するもののみが、西八幡駅付近に設けられた製品倉庫に移送され、保管される。製品倉庫から西八幡駅構内までチキ車を引き出すには入換運転が必要になる。入換後はJR貨物によって日本全国へ発送される[7]

【脚注】

  1. 「新日鉄八幡の賀詞交換会に約1000人が参加」、『日刊産業新聞』、2002年1月8日。
  2. 「新日鉄、ロシア向けに熱処理レール7万トン成約」、『テックスレポート』、原料・鉄鋼貿易版、2009年3月25日。
  3. 過去には、くろがね線でも鍋台車やトーピードカーによる溶銑輸送が行われていた。鉄道ファン1984年3月号には、70DD-3形ディーゼル機関車がトーピードカー2両を牽引してくろがね線を走行している写真が掲載されている。
  4. 再生利用する「原料としての」レールであれば、第11回で取りあげた通り、くろがね線で輸送されることがある。
  5. 工場→倉庫間のレール輸送には、チキのような形態のレール輸送用の構内専用貨車が使用されることもある。
  6. 『日経ビジネスオンライン』、2008年6月2日。
  7. JR九州向けのレールは、JR九州が設定する工事用臨時列車によって輸送される。

【参考】

  • 栗原 利喜雄「鉄道用レールの変遷と現状」、日本機械学会誌、第78巻、第683号、1975年10月。

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コメント

こんにちは。今週火曜日(28日)の8866レの組成は EF651121+コキ2両+トキ2両+九チキ3両×2本 でした(吹田で撮影)

この九チキが先週金曜日に引き出されたヤツでしょうか?
ちなみに昨日(29日)の8865レは EF65100+EF66105+九チキ3両+緑チキ3両 だったらしいです。

※雷鳥の話から離れてしまったのでこちらの記事にコメントします。

投稿: RUIDO | 2010年9月30日 (木) 14:13

RUIDOさんこんばんは
レール臨貨編成のご報告ありがとうございます。
吹田でも撮れるんですね。8866は賑やかで興味深いですね。トキの連結は広島→名古屋でしょうか。

西八幡は入換のパターンがだいぶハッキリしてきましたので、また機会があれば発表するつもりです。金曜日は午前中に工臨の到着→入換もあり、スイッチャーも頻繁に動いていました。午後にレール線も動きました。

投稿: 社長 | 2010年10月 2日 (土) 21:58

こんばんは。吹田は「雲の日のビデオ・型式写真限定アングル」という感じなのであまりオススメではないです。

トキ25000の運転区間ですが日によって変わるみたいですね。広島〜梅小路〜吹田貨車センターや広島〜稲沢(東港)など… あとトキ25000は基本的には2両(29231・29467)で運用しているみたいですが先週火曜日は別の2両(28678・28921)でした。何両居るかは不明です。

西八幡…いい加減撮影したい場所です。去年電車の中から見ただけなので…

投稿: RUIDO | 2010年10月 5日 (火) 18:05

RUIDOさん
本日西八幡に引き出されたのは、日鐵運輸緑チキ6連でした。月曜の朝、出発するものと思われます。
なお本日朝出発した170レは、九チキ3連でした。

投稿: 社長 | 2010年10月15日 (金) 17:12

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