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2009年10月10日 (土)

「美祢線赤ホキ終焉」報道の迷走を憂う(5)

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■左が2009年9月現在の入換風景。機関車は奥から手前へ貨車を推進しながら1両ずつ荷役を行う。右は2009年3月の様子。当初はこのように機関車牽引であった。

 第4回では、レイルマガジン誌に掲載された「フロート釜廃止に由来する2009年5月廃止説」に疑義を呈したが、案の定、6月に入っても美祢線・宇部線の石灰石貨物列車の運行は継続されている。一部のブログには

  • 「奇跡的に廃止を免れた」
  • 「なんとか持ちこたえた」

といった喜びの声もみられるが、実際のところは第2回で取りあげた10月廃止という既定事項が、あらためて確認できただけの話なのである。

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■圧縮空気によりホッパーを開放し、石灰石を降ろしたホキ車。左にある四角い箱が圧縮空気を供給するコンプレッサー。

 ところが、この貨物列車に関する誤報はこれだけでは終わらない。月刊鉄道趣味誌で、レイルマガジンの次に本件に触れたのは、鉄道ファン2009年11月号である。

郷田恒雄 「全国の現役機関車をめぐって」

 民営鉄道の電気機関車・ディーゼル機関車はいま~その26~

この連載記事では、これまでおよそ2年間にわたり、全国の私鉄・臨海鉄道の車両やその運用が紹介されてきた。無論、25回も連載を続ければ、一通り紹介し尽くしてネタがなくなるのは無理からぬことで、最近ではこれまでの記事の補遺などページ枠を消化するための苦しい内容の記事が続いていた。しかし今月発売の11月号から、ついに専用線の機関車の紹介が始まったのである。その第1回が、美祢線・宇部線に接続する専用線、というわけである。

 郷田氏の記事に含まれている問題点については、機会があれば別途述べることにして、今回は123ページに記載されている、件の石灰石輸送に言及した次の部分に注目したい。

>現在、宇部工場にあるガラスフロート釜でプラズマディスプレイパネル用に電極を表面に形成したガラス板を生産しており、基板原料として美祢線重安に隣接する太平洋セメント重安鉱山から産出される石灰石を使用している。

この文章に対して、皆さんはどのような印象を抱いただろうか。おそらく、多くの方にとっては「へぇ~、そうなんだ」でスルーされてしまいそうな、一見もっともらしい記述である。しかし、これまで情報を集めてきた者にとっては首を傾げざるを得ない三つの誤情報が含まれているのである。

誤報1> 現在、宇部工場にあるガラスフロート釜で…生産しており

既にセントラル硝子よりこのようなプレスリリースも出ている通り、ガラスフロート釜は2009年5月一杯で稼動を停止している

誤報2> プラズマディスプレイパネル用に…ガラス板を

これについては、セントラル硝子のこちらのプレスリリースご覧いただきたい。記載の通り、プラズマディスプレイパネル用のガラス板の製造は、2008年度をもって終了している。

鉄道ファン2009年11月号の発売日は9月20日、原稿締切日は8月25日である。本文の記述や著者撮影の写真の日付から考えて、著者が記事を書いたのは2009年夏頃の可能性が高いが、その段階で宇部工場では、ガラス製造も、プラズマディスプレイパネルの製造も行われていないのである。

誤報3> 基板原料として…石灰石を使用している。

輸送されている石灰石がガラス原料ではないことは、第2回などでこれまで述べてきたとおりである。

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■空のホキ車を厚狭まで輸送する小運転列車。2~3両編成が多い。

郷田氏は記事の中で、8月に入っても石灰石輸送が継続していることには触れている。レイルマガジンでも大々的に取りあげられた、2009年5月のガラスフロート釜停止。おそらく、郷田氏はそれを知っていると思われるが、記事中ではあえてそのことに触れていない。それもそのはず、もしガラス製造停止に触れてしまうと、「それではなぜ、製造停止後も石灰石輸送が継続しているのか」という疑問に答えられないからである。苦肉の策として、フロート釜停止をなかったことにする、という荒業で逃げ切ったつもりなのだろう。

 このような誤解が生まれる原因は何だろうか。答えは身近なところにあると私は考えている。Googleなどの検索サイトで、「美祢線」「石灰石」「廃止」などいくつかの複数キーワードで検索してみると、上の3つの情報は個人のブログに記載された個人的推測として見つけられるはずである。某巨大掲示板情報然り。

雑誌記事のソースと思われる情報が、雑誌発表前にネット上で誰でも容易に検索できるのが、今の世の中である。郷田氏の記事には、荷主などのインサイダーに取材しなければ分からないような、独自の真新しい情報は、一切含まれていない。郷田氏は、この件でほとんど取材をしていないのではないかと、私は強く疑っている。特に「誤報3」など、関係者に取材をすれば白黒はっきりする話なのだから。

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■厚狭から宇部岬への2本目の列車。こちらもやはり2~3両編成が多い。

 上の写真の宇部線内小運転列車についても、首を傾げたくなる記述がある。美祢線内で1本だった列車が、宇部線内で2本に分割される理由について、である。

>宇部岬駅の線路有効長に制限があるため

郷田氏はこう表現しているが、有効長というのは必ずしも個別の駅毎に決まっているものではなく、路線の区間毎(駅間)で決まる要素が大きいものである[1]。個々の駅での、編成同士のすれ違いが物理的に何両まで可能なのかという話とは別に、例えば、駅構内の出発信号機の設置位置やATS地上子の設置場所なども、有効長に配慮して設置されているものである。無論、起点駅と終点駅の設備さえ許せば、中間駅の交換設備などの制約を無視して、例外的に有効長を超える列車を走らせる場合もある(このような列車は、対向列車をすべて退避させる必要があることから「殿様列車」と呼ばれる。お召し列車運行時などにこのような扱いがある)が、日常的に運行されている貨物列車で、このような運用が行われているとは考えにくい。この貨物列車の編成が宇部線内で分割されるのは、「宇部線の設備的制約による」という表現が妥当であろう。決して「宇部岬駅」単独の問題ではないのである。

  1. 鉄道事業法に基づいて定められた、国土交通省令「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」第三十四条第二項には、「停車場において待避の用に供される本線の有効長は、当該本線に待避する最長の列車に対し十分な長さとしなければならない。」とある。

(続く) 

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