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2010年3月24日 (水)

【コラム】袋セメントの鉄道輸送

 先日のスイッチャーに関する記事の中で、秩父鉄道のスム4000形貨車が登場しました。せっかくなので、「袋セメントの鉄道輸送」について、備忘録的に記しておこうと思います。

一般に、セメント業界の物流面にスポットを当てた記事が鉄道趣味誌に載ることは、滅多にありません。きちんと取材をして調べなければ分からないことがほとんどですし、仮に記事を書いても読者の興味をひくのが難しいからでしょう。(それ以前にこの手の記事は、電気車研究会の『鉄道ピクトリアル』か、吉岡心平の貨車ホームページ、ないねん出版の『鉄道番外録』以外では、滅多に採用されない気がしますが…笑) しかしそんな隙間ネタこそ、当ブログの十八番です。

●バラセメントと袋セメント

 さて、袋セメントの輸送について説明する前に、セメントの荷姿について説明しておこうと思います。セメントを輸送する際の荷姿には、「バラ」と「袋」があります。「バラ」とは「バラ撒き」の略で、バラ輸送とは粉体を専用の容器に入れて輸送することです。「」は、包装設備で粉体を袋詰めしたものです。他にも、フレコン(フレキシブルコンテナ)や缶など荷姿は色々あるのですが、鉄道輸送には直接関係ないので省略します。

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■秩父鉄道三峰口駅付近に保存されているスム4000形4023号  2009年

バラの鉄道輸送には、タキ1900形や12200形、ホキ5700形といった専用貨車が使用されるため、鉄道ファンの注目度も高くなっています。これに対し、袋の場合は有蓋車での輸送となるため、外見では積荷が分からず、セメント輸送として注目されることはほとんどありません。もちろん、かつての秩父鉄道のように、テキ100形やスム4000形など、袋輸送専用の貨車を用意している私鉄の場合は大いに注目されますが、輸送そのものはあまり長続きしませんでした。一般に、わざわざ袋詰めして輸送するのは小口の需要家へ届けるためですから、輸送手段としては、鉄道貨車よりも小回りの利くトラックの方が適しています。

そんな背景もあり、鉄道の世界ではすっかり影を潜めている袋セメント輸送。しかし、実はまだ現存している、というのはあまり知られていません。なぜでしょうか。これを理解するには、二つの前提知識が必要になります。

●一次輸送と二次輸送

 まずセメントメーカーの物流について把握しておく必要があります。これについては、セメント協会のホームページに簡潔にまとめられています。

下のリンクで、「物流の合理化」の下の方にある「■セメントの物流プロセス」欄を参照。
http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc6.html

工場で生産されたセメントは、まず各地に点在する出荷場所(SS:サービスステーション)まで、船舶・鉄道・トラックなどで輸送されます。これは自社内在庫移動の一種で、一次輸送と呼ばれます。SSは、セメントを貯蔵するためのサイロを2~3基備えており、常時2~3品種が出荷可能な状態になっています。SSは、かつては包装所と呼ばれ、バラセメントを袋詰めするための設備を有しています。大規模な一部のSSは混合設備を有し、混ぜものを添加して多様な品種を作り出せるところもあります。ちょうど工場の仕上工程の一部をSSが担っているようなイメージです。

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■某県内にあるセメントメーカーのSS(サービスステーション)。
 サイロの下でセメントを積込み、トラックで出荷。

SSから先は、必要に応じて生コンメーカーなど需要家へ届けられます。生コンメーカーへはバラ車での輸送が大半だと思いますが、小口需要家へは袋詰めしたものを届けることになります。これらは販売のための輸送で、二次輸送と呼ばれます。

●セメントの品種と出荷量

 次は、セメントの品種について。セメントにはさまざまな品種がありますが、出荷量が多いのは普通セメント()、早強セメント()、高炉セメントB種(BB)の三種類です(カッコ内はJIS品種名)。この三品種だけで、全出荷量の95%以上を占めます。セメント協会の統計よる内訳は、Nがおよそ70%、Hが5%、BBが20%という割合になっています。

●なぜ袋を鉄道輸送する必要があるのか?

 先程、SSにはサイロが2~3基あると述べました。統計の通り、出荷する品種の大半はN、H、BBのいずれかですので、1品種を1サイロに貯蔵するとしても、3基あれば十分需要に応えることができます。では、これ以外の品種を出荷する場合は、どうするのでしょうか。

特殊セメントの出荷量は全体の5%に満たないため、わざわざ各SSにサイロを設けて常備しておく必要はありません。更に上で述べたとおり、大抵のSSには混合設備がありません。つまりSSでは、特殊セメントの貯蔵も生産もできないわけです。したがってこのような品種は、工場から直接需要家へ二次輸送することになります。量が少なく小口のため、袋の割合が高まります。SSの拠点数は、一社あたり百から数百箇所にのぼり、日本中にそれなりの密度で点在していますが、工場は数が限られますので、当然需要家までの二次輸送の距離は長くなります。長距離で、かつ小口輸送。このフレーズ、どこかで聞いたことはありませんか?

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つまりコンテナ輸送ですね。私の知っているところでは、兵庫県からはるばる関東まで輸送している事例があります。もっともセメントメーカー側は、輸送を運送会社に委託していますので、鉄道を利用しているという意識は無いかもしれませんが。

 専用貨車によるセメント輸送は、2006年3月のダイヤ改正で激減。2008年3月改正以降は、東藤原-四日市間を残すのみとなりました。しかし、袋セメントをはじめ、製品の一つであるタンカル(炭酸カルシウム粉末)や石灰石骨材、そして原料用の石炭灰や汚泥・建設廃土などの輸送には、地味ではあるものの今でも鉄道が利用されています。今後も、こうしたセメント業界の物流の動向に注目していきたいと思います。

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