« フルコースで楽しむ★とうてつ電車まつり2011年夏★ | トップページ | ■トワイライトゾーン?■茂原の58680 »

2011年8月 3日 (水)

★東邦亜鉛号★毎年夏場にタキが後ろに付く理由

 東邦亜鉛号(通称:安中貨物)は、毎年夏場を中心に変わった編成で運行されることがあります。この列車、日曜祝日以外は機関車+タンク車12両+無蓋車6両で運行されることが多いのですが、夏場になると「タキ無し編成」「トキ+タキ編成」で運行される日が増えてきます。「タキ無し編成」とは、文字通りタンク車が1両も連結されておらず無蓋車のみで組成された編成です。「トキ+タキ編成」とは、通常機関車側に連結されているタンク車が、無蓋車の後ろに連結されている編成です。

 本事象は、2011年夏も例年通り見られるようになりました。RMニュースにも早速報告があがっていますが、今だけのイレギュラーな運用であるかのような誤解をしている方がいらっしゃるかもしれませんので、この機会に記事としてまとめることにしました。

●トキ+タキ編成を追う -タキはなぜ後ろに付くのか?-

Tokionly_01_ef81
■毎年夏場に運行される「トキ+タキ」編成   2009年7月13日、我孫子

 上の写真は、2009年夏に運行されていた安中行きです。ご覧のように、機関車の後ろにトキが6両続き、最後尾にタキが1両連結されています。典型的な「トキ+タキ」編成です。この編成が安中到着後にどうなるのかを追ってみましょう。

Tokionly_02_ef81
■安中に到着した「トキ+タキ」編成    2009年7月13日、安中

同じ日の同列車の安中到着直後です。JRのEF81形電気機関車が切り離されると…

Tokionly_03_dd352

精錬所のスイッチャーがトキ6両を専用線へ引き込みます。注目すべきは写真左端です。最後尾のタキが切り離されていることがお分かりいただけるでしょうか。

Tokionly_04_dd352

入換が始まり、到着したトキ6両と、専用線内で荷役済みの空車トキ6両が交換されます。空車トキ6両に、同じく空車のタキが3両連結され、JRの側線へ押し込まれます。

Tokionly_05_takitoki

JRの側線の高崎寄り(写真左端)には、到着直後に切り離されたタキが1両ぽつんと残されています。そこ目掛けてタキ3両+トキ6両が押し込まれます。

Tokionly_06_takitokidd352_to_ef81

タキ1両に連結。スイッチャーによる入換はこれにて終了。あとは写真左端のEF81が編成に連結されて出発するのみです。

これでもうお気づきかと思いますが、EF81寄りのタキ1両は安中でまったく荷役を行っていませんタキがトキの後ろに連結されていたのはこのためです。もし、普段どおりにタキがトキの前に連結されていると、荷役を行わない車両をわざわざ入れ換えることになり、安中駅構内の入換作業が煩雑になってしまいます。

●なぜ荷役を行わないのか?

 さて、タキが荷役を行わない理由はもちろん「荷を積んでいないから」ですが、なぜ空の貨車が運行されているのでしょうか。その答えは、貨物時刻表にあります。安中発宮下行きの列車を追ってみると、熊谷貨物ターミナルで貨車の連結・解放が行われるように記載されています。もちろん普段は連結・解放はありませんが、川崎貨物駅隣接のJR貨物川崎車両所で貨車を検査する際は、熊谷タで増解結が行われます。検査対象の貨車は、熊谷タと川崎貨物の間で配給6794・6795列車に継送されて回送されます。つまり、安中行きのトキの後ろに連結されているタキは、検査のための回送車両ということになります。

6795re_taki120020_01 6795re_taki120020_02
■川崎車両所で検査を終え、配6795列車で熊谷タへ向かうタキ1200-20 2016年2月、上尾

●なぜ夏場なのか?

 それでは更に突っ込んでみましょう。なぜ毎年夏場に貨車の検査が実施されているのでしょうか。実は車両の検査期限とはあまり関係がありません。非鉄金属メーカーT社では、小名浜・安中両精錬所で毎年7~8月に定期修理を実施しています。亜鉛精鉱から亜鉛を取り出すためには、まず前工程において、焙焼炉と呼ばれる釜で亜鉛精鉱を亜鉛焼鉱(酸化亜鉛)にしておく必要があるのですが、定期修理時にはこの釜の火も落ちますので、亜鉛焼鉱の生産が止まります。

このため、小名浜精錬所の定期修理期間中は亜鉛焼鉱輸送用貨車であるタキは編成から外れますこれが、夏場に「タキ無し編成」が増える理由です。そして、貨車の検査は貨車を使用しない定期修理期間中に行うのが合理的であることから、タキ無し編成の最後尾に検査対象のタキが1~数両連結されることがある、というわけです。

いっぽう、安中精錬所の定期修理期間中は、原料となる亜鉛精鉱を輸送する必要がなくなるため、亜鉛精鉱輸送用貨車であるトキが編成から外れます。これは操業停止中も同様で、たとえば東日本大震災後6月に運行再開した安中貨物が、しばらくの間トキ無しの編成で運行され続けていたのも、安中精錬所の亜鉛焼鉱生産プロセスが停止していたためです。亜鉛焼鉱から亜鉛を取り出す後工程は稼動していたため、タキは運行されていたわけです。

 専用線発着の貨物列車の運行は、荷主の操業状況に大きく影響を受ける、その最たるものが安中貨物である、と言えるのではないでしょうか。

●2011年8月25日追記

 なお2011年11月に、安中で臨時修理が予定されています。その時が来れば、また運行状況や編成に変化が見られることでしょう。

【参考】

  • 楠田泰彦、森田英治「小名浜・安中精錬所の亜鉛精錬」Journal of Mining and Materials Processing Institute of Japan VOl.123 pp.646-650(2007)
  • 日刊工業新聞2011年6月6日版

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道路線・車両研究へ にほんブログ村 鉄道ブログ 貨物列車へ
にほんブログ村 (鉄道ブログポータルサイト)

【注意】
 当記事掲載の写真は、特記の無い限りすべて公道(もしくは社会通念上立入りの許される区域)から撮影したものです。無断で私有地・社有地等へ立ち入ることは絶対におやめください。

【著作権の表示】
 当ブログの著作権者は、特記の無い限り、私 「社長」です。当ブログのすべての文章・写真・図面および図表は、日本国の法律(著作権法)と国際条約によって保護されています。改変したものも含めて、著作権者に無断で複製・配布することは出来ません。雑誌記事等への無断引用・転載も禁止します。万が一発見した場合は、当該出版社に対して然るべき措置をとらせていただきます。

|

« フルコースで楽しむ★とうてつ電車まつり2011年夏★ | トップページ | ■トワイライトゾーン?■茂原の58680 »

 E.三菱のスイッチャー」カテゴリの記事

コメント

こん××は
小名浜と安中の位置付けが東邦亜鉛公式HPを見てもよくわからなかったのでググってみました。
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/55f8211d9d3981f4072180ea38771b25/
ということで、安中貨物はフル編成になるとタキがトキの2倍長いわけですね(厳密な積載量は計算してませんが......)
そして、安中→小名浜はタキ、トキ共に空車なんですね。今まで沿線民なのに良く分かってませんでした(汗)
あと、小名浜精錬所の定期修理期間中は亜鉛焼鉱の輸送は不要というより不可能、と考えたほうが良いのでは??

投稿: はいしゃさん | 2011年8月 4日 (木) 23:49

はいしゃさん
こんばんは。東洋経済の記事リンクありがとうございます

実を言いますと、記事の「参考」に挙げた論文には、小名浜と安中の焙焼炉について、それぞれの投鉱量(炉に投入する亜鉛精鉱の1日あたりの量)が、小名浜500t、安中250tと記載されています。そして、小名浜の転化率(投入した亜鉛精鉱が亜鉛焼鉱に転化する割合)は、98.6%となっています。

これをベースに計算しますと、

小名浜で1日あたり生産される亜鉛焼鉱は概算で
   500t × 0.986 = 493t
となり、これをタキ15600形(荷重40t)で輸送しようとすると、
   493t ÷ 40t ≒ 12.3
となり、まさにタキが12両程度必要になることが窺えます。

また安中で使用する亜鉛精鉱は250tですから、これを小名浜からトキ25000形(荷重40t)で輸送しようとすると
   250t ÷ 40t ≒ 6.3
となり、トキが6両必要になることもわかりますね。

あくまでもざっくりとした計算ですが。。


ご指摘の部分については私自身も文章が分かりにくく改善の余地があると思っています。おりをみて修正させていただきます

最後になりましたが、安中の火入れは8/6の予定です。トキの復活は早くてもそれ以降かと思われます。タキはもっと後でしょうか。

安中貨物は毎年この時期に運休が続くたびに「廃止か」と騒がれますが、毎年のことですからファンにもそろそろ冷静になってもらいたいと思っているのですが(苦笑)

今後ともよろしくお願いします

投稿: 社長 | 2011年8月 5日 (金) 20:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/63194/52385193

この記事へのトラックバック一覧です: ★東邦亜鉛号★毎年夏場にタキが後ろに付く理由:

« フルコースで楽しむ★とうてつ電車まつり2011年夏★ | トップページ | ■トワイライトゾーン?■茂原の58680 »