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2011年10月24日 (月)

【くろがね線を読み解く】第94回■骸炭消火電車

 製鉄所の敷地内では、我々が日ごろ目にすることのない様々な設備が、24時間、365日動き続けている。鉄道マニアの興味の対象は、もっぱら工程間輸送を担う鉄道であるが、コークス工場にも人知れず動き続ける機関車がある。

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■J社C製鉄所のコークス工場。本棚のように並んでいるのが炉室。  2011年10月23日

 製鉄所(一貫製鉄所)とは、

  1. 鉄鉱石に含まれる硫黄・酸素・珪素・燐などと結合した鉄を、一度炭素で還元して炭化鉄とし、
  2. 今度はこれを酸化して炭素を除去し純度の高い単体の鉄を取り出す

プラントのことである。前者(1)を製銑と呼び、後者(2)を製鋼と呼ぶ。このように、鉄鉱石から鉄を取り出すうえで重要な役割を担うのが炭素であるから、ほとんどの製鉄所には石炭からコークス(骸炭)を製造するための設備=コークス炉がある。

コークス炉は、上の写真のように幅数十メートル、全長数百メートルの細長い設備で、長辺方向には炉室(石炭を蒸し焼きにするためのオーブンのようなもの)が並んでいる(これを炉団と呼ぶ)。炉団の両側には、やはり長辺方向にそれぞれ軌道が設けられている。片方の軌道は、押出し機と呼ばれる移動クレーンのような機械が走行する。読んで字の如く、焼きあがったコークスを炉室から押し出すための機械である。押し出すということは、当然反対側にはコークスを受ける設備が必要で、これが消火車である。押出し機の走る軌道は移動クレーンのレールそのものであるが、消火車の軌道は、軌間が1,067mmであったり、1,435mmであったり、古い製鉄所だとナローであったりするので、限りなく鉄道に近い存在といえる。製造者をみても、押出し機は重工メーカーが製作しているのに対し、消火車は鉄道車両メーカーが製作していることも少なくない。

消火車の役割は、受けたコークスを消火塔まで運び、水をかけて冷やすことである。エネルギー効率を上げるため、最近では、冷媒に水ではなく不活性ガス(液体窒素など)を使用することが多いようである。そして、消火車を移動するために用いられているのが、今回紹介する消火車牽引用機関車=消火電車である。

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■J社C製鉄所の消火電車。右側の樹木の向こうに消火車がいる。  2011年10月23日 

 消火電車は、英語でQuenching Electric Locomotive、電気機関車(EL)に対してQELと呼ばれる。一定の速度で走行し出力の調整も不要なため、交流モーターを駆動するものもあり、このようなタイプは車体の横に張られた3本の架線から三相交流を受電して走行する。大手の鉄道車両メーカーのほとんどは、戦前から多くのQELを製作してきたが、特殊用途ゆえ現在では産業機械メーカーの作るものが多い。上の写真のQELは、残念ながらN社Y製鉄所のものではなく、J社C製鉄所のものである。かつては、系列の車両メーカー(川崎車輌/川崎重工)製のQELが使用されており、東芝戦時型を縦長にしたような凸型の電気機関車が見られたものだが、2011年現在稼動しているのは、車体に「新トモエ電機工業」と記載されたプレートを付けている。やはりこの世界でも世代交代が進んでいるようである。

 鉄道趣味誌において消火電車が詳細に取り上げられたのは、鉄道ピクトリアル2011年3月号の石本氏の記事が最初である。図解もあり大変分かりやすいので、ぜひご一読いただきたい。

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コメント


 初めまして。

 消火電車の記事拝見しました。

 私は仕事で製鉄所のコークス炉に何箇所か行ったことがあり、
 消火電車にも乗った経験があります。

 いくつかコメントさせて頂きます。

 ・走行モーターは直流駆動車もあります。
 ・交流モーター駆動車はインバーター制御です。
 ・私が乗ったのは東芝製でした。
 ・軌道は私の見た限りでは1435mmでした。
 ・押出し機の反対側でコークスを受けるのはガイド車です。
  その下に消火電車です。
 ・現場ではみな電車と呼んでいます。

 画像の製鉄所には行ったことがありませんね。
 
 コークス炉は大体構内の奥の方です。

投稿: えごぱわー | 2011年12月 1日 (木) 20:14

えごぱわーさん
コメントありがとうございます。
以下、分かる範囲でお答えします。

(1)走行モーターは直流駆動車もあります。

私も複数の製鉄所の方からそのように伺っておりますので、そう理解しています。すべて交流電動機駆動という誤解を与えたのでしたら、失礼しました。

(2)交流モーター駆動車はインバーター制御です。

う~ん、これは一概には言えないと思います。
というのも、私は本記事執筆にあたり、手元にある渡邊肇著「日本製機関車製造銘板・番号集成」(以下、渡邊台帳)を参照しています。この自費出版書籍は、渡邊氏が各車両メーカーからサプライリストを調達・ヒアリングしてまとめられた労作で、戦前から1980年頃までに大手メーカーで製作されたすべての機関車の製造番号と諸元が記されています。渡邊台帳によれば、交流電動機駆動の消火電車が戦前から製作されていたことが分かります。

釈迦に説法とは思いますが、インバーター制御が本格的に普及し始めたのは、半導体技術の進歩した1980年代以降であります。渡邊台帳に掲載されている時代の消火電車は、インバーター制御ではありません。

ご存知と思いますが、現在でも鉄道事業者の車両工場へ行きますと、3相交流+誘導電動機の組み合わせで稼動している天井クレーン(車体吊り上げ用)やトラバーサー(車体水平移動用)を見ることができますが、その多くはインバーター制御ではありません。インバーター制御登場以前の交流モーター駆動の消火電車は、技術的にはこれと似たようなものでしょう。

(3)私が乗ったのは東芝製でした。

 どのような形でしたか。古いものは凸型電気機関車の風貌ですが、新しいものは「動くアパート」のようで味気ないですね。

(4)軌道は私の見た限りでは1435mmでした。

ゲージは色々あるようですね。ちなみに九州のY製鉄所は1,435mm、関西のW製鉄所は762mmのようです。

(5)押出し機の反対側でコークスを受けるのはガイド車です。その下に消火電車です。

これは言葉の使い方の問題ではないでしょうか。
コークスを輸送するために受けている(受骸する)のはまさしく消火車であり、そういう意味で「受ける」と書いています。ガイド車は押し出されたコークスに一次的に接触しますが下で受けているわけではありませんよね。

(6)現場ではみな電車と呼んでいます。

製鉄所、鉱山の電気機関車は電車と呼ばれることが多いですね。

(7)画像の製鉄所には行ったことがありませんね。

私は、九州のO製鉄所、K製鉄所以外はすべて行きました。
 
(8)コークス炉は大体構内の奥の方です。

これもコークス工場のレイアウトによりけりですね。
例えば、三菱化学坂出事業所にはコークス工場があり、外部から見える海沿いを消火電車が動いています。
高松行きマリンライナーに乗っていると、南備讃瀬戸大橋を渡った直後に進行方向左側の車窓から見えます。
Y製鉄所のコークス工場はやや内陸にあります。

今後ともよろしくお願いします。

投稿: 社長 | 2011年12月 6日 (火) 18:37

こんにちは。

蛇足ですが、九州のK製鉄所は確か、近所の化学メーカーからの購入のためコークス炉は無かったと思います。

投稿: 鹿島田 みゆき | 2012年3月 3日 (土) 14:56

鹿島田みゆきさん
コメントありがとうございます

そうですね。仰るとおり、ご指摘のK製鉄所には、コークス炉がありません。以前は同じ北九州市内にある三菱化学黒崎工場からコークスを仕入れていましたが、コークス製造部門が坂出に転出して以降は、まさに前述の坂出工場(現 坂出事業所)から仕入れています。蛇足ではありませんよ(^^;

投稿: 社長 | 2012年3月 3日 (土) 23:19

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