« ★290000アクセス突破★JR東海キヤ95系DR1編成による軌道検測 | トップページ | 【くろがね線を読み解く】第101回 ■架線保守作業用台車 »

2012年2月16日 (木)

【くろがね線を読み解く】第100回記念■新日鐵釜石D3533に関する一考察

 『くろがね線を読み解く』の連載が、遂に100回を迎えた。これを記念して、今回は普段とは少し違った角度から考察を試みることにする。タンク屋しんちゃんのブログにて2011年8月8日に発表された、新日鐵釜石D3533 についてである。他所様のブログの内容について言及するのは若干憚られるのだが、今回は100回記念ということでご了承いただきたい。

1.社紋

Marus_fujis Marus
■機関車の車体側面に掲出された社紋。左が2011年現在の新日鐵、右が旧八幡製鐵

 左写真が、2011年現在の新日鐵の社紋である。○(マル)の中に富士山が上下に一つずつ入り、その中心部にSTEELの頭文字S(エス)を配している。これは、合併前の旧 八幡製鐵の社紋・マルエス(○の中にS、右写真)と、旧 富士製鉄の社紋・フジエス(富士山の中にS)を組み合わせたデザインである。これに対し、新日鐵釜石D3533の社紋はどうだろうか。吉岡氏の記事の写真をよく観察してみると、社紋は右写真と同じマルエスであり、旧 八幡製鐵の機関車であることがうかがえる。

2.ナンバープレート

Np_d442_3  Np_370
■機関車のナンバープレート。左が2011年現在の新日鐵のDL、右が旧八幡製鐵のSL。

Np_d610_3  Np_s205
■左が室蘭製鐵所のDL、右がテツゲン(室蘭製鐵所のコークス工場)のSL。

 次にナンバープレートを観察してみると、ここにも八幡製鐵に共通する特徴がある。上段は八幡製鐵所(旧八幡製鐵)の機関車のナンバープレート、下段は室蘭製鐵所(旧 富士製鉄)の機関車のナンバープレートで、各々左はディーゼル機関車、右は蒸気機関車のものである。

比較してみると、旧八幡製鐵の機関車のナンバーの書体は、角が落とされたいわゆる「八幡フォント」で統一されていることが分かる。D3533のナンバーの書体が八幡フォントであることから考えても、もともとは八幡製鐵の機関車であった可能性が高い。

3.製鐵所の絞込み

 新日本製鐵の各一貫製鉄所の合併前の会社名は次のとおりである。

  • 旧 八幡製鐵系列 … 君津、堺、八幡(戸畑含む)
  • 旧 富士製鐵系列 … 室蘭、釜石、広畑
  • 旧 東海製鐵    … 名古屋 

   ※大分は計画段階では富士製鉄系列であったが、高炉へ火入れをしたのが合併後であったため、新日本製鐵としてスタートした。

ご覧のように、D3533が使用されていた釜石は旧 富士製鐵であるから、使用する機関車のナンバープレートに八幡フォントを採用する必然性がない。したがってこの機関車は八幡製鐵系列の製鐵所からの転属車であると考えられる。

4.軌間による特定

 では旧八幡製鐵系列だったとして、いったいどの製鐵所からやってきたのだろうか。上記の旧 八幡製鐵系列の製鉄所が構内鉄道に採用している(いた)軌間をまとめると、次の通りである。

  • 君津  … 1,435mm
  • 堺   … 1,067mm、1,435mm
  • 八幡  … 1,067mm

釜石には、軌間762mmと1,067mmの線路が混在していたが、D3533が使用されていた国鉄との連絡線は1,067mmであったから、八幡か堺からの転属車ということになる。ここまで絞り込んだところで、渡辺肇著『日本製機関車製造銘板・番号集成』を参照すると、日立製作所が堺向けに納入したのは1,435mmの55t機のみであることがわかる。したがって、消去法によりD3533の正体は、

  • 1963年 日立製作所製35tディーゼル機関車 35DD-8形D3533 製番12687
    新製配置された八幡製鉄所からの転属車
  • 全長:11,050mm、幅:2,600mm、高さ:3,690mm
  • 機関:DMH17SB(300ps)、液体変速機:TCW2.5、燃料タンク容量:1000L

と特定される。

5.エアータンクが一杯

 吉岡氏が言及している「エアータンクが一杯ある」のは八幡製鉄所に納入された日立のDLに共通する特徴である(防音構造のために車体を大型化し、ボンネット内のスペースに余裕ができた45DD-12形を除く)。また同時期に私鉄・専用線向けに納入された車両の一部にも、同じ特徴を持つものがある。

重量物を運搬する製鉄所の貨車は、通常は貫通ブレーキを備えておらず、制動は機関車まかせである。このため製鉄所の機関車は、一般の鉄道の機関車と比べてより安定したブレーキ力が求められる。D3533はこうした背景から、レディメイドのスイッチャーの設計をベースに、ブレーキ用エアタンクを増設するよう設計変更されたものと思われる。

私は、大学時代に実験用サンプルを作成する目的で真空ラインを扱っていたことがあるが、一般に空気ダメの容量を大きく取ればとるほど、一定時間バルブを開放して空気を外の系に放出した際の圧の変化を抑えることができる。ブレーキ操作によって圧縮空気が作用するのは瞬時のことなので、コンプレッサーの容量を増やしたところで解決する問題ではない(所定の圧に復元するまでの時間が短くなるだけである)。

なお同時期に日車が八幡に納入していた35t機(35DD-9形)を外から眺めてもエアタンクは見当たらないが、これは日車の機関車が製鉄所向けに一から設計されたためであろう(日車の車輌史の35DD-9形のキャプションに関連する記述あり)。日車が新規設計してスマートに造ったのに対し、日立は既成品の手直しでコストダウンを図ったために、増設されたエアタンクが外部に露出することになったと思われる。

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道路線・車両研究へ にほんブログ村 鉄道ブログ 貨物列車へ
にほんブログ村 (鉄道ブログポータルサイト)

【注意】
 当記事掲載の写真は、特記の無い限りすべて公道(もしくは社会通念上立入りの許される区域)から撮影したものです。無断で私有地・社有地等へ立ち入ることは絶対におやめください。

【著作権の表示】
 当ブログの著作権者は、特記の無い限り、私 「社長」です。当ブログのすべての文章・写真・図面および図表は、日本国の法律(著作権法)と国際条約によって保護されています。改変したものも含めて、著作権者に無断で複製・配布することは出来ません。

|

« ★290000アクセス突破★JR東海キヤ95系DR1編成による軌道検測 | トップページ | 【くろがね線を読み解く】第101回 ■架線保守作業用台車 »

▼くろがね線を読み解く」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/63194/53356984

この記事へのトラックバック一覧です: 【くろがね線を読み解く】第100回記念■新日鐵釜石D3533に関する一考察:

« ★290000アクセス突破★JR東海キヤ95系DR1編成による軌道検測 | トップページ | 【くろがね線を読み解く】第101回 ■架線保守作業用台車 »