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2012年7月 9日 (月)

【くろがね線を読み解く】第107回 ■俗説を斬る!「無人運転」の怪

 ウェブ上で「くろがね線」のキーワードで検索してみると、多く方が撮影されたくろがね線の写真や映像を見ることができる。中には、複線時代や、更に古く60ED形が活躍していた頃の記録を残されている方もいて、大変興味深く拝見している。

 ところが、最近少し気になっていることがある。コメントや記事を読ませていただくと、どういうわけか「くろがね線は無人運転が行われている」という奇怪な俗説を彼方此方で見かけるのである。中には、運転士がはっきり写っている写真をお持ちにもかかわらず、運転士ではないと解説している記事 まで見受けられ、看過し難い状況になっている。もちろん、仮にそのような記事が、この路線に関して情報の少なかった時代に執筆され、メンテナンスされずにそのまま残ってしまったものであれば、目くじらを立てるほどのことでも無いのだが、ここ1~2年の間に新たに作成された記事にかような記述が蔓延しているのを知ってしまうと、もはや見逃すわけにはいかない。

 結論から申し上げておくと、くろがね線は戸畑第一操車場から八幡第二操車場まで全区間にわたって運転士が乗務し、運転操作を行っており、無人運転などは一切行われていない。私はこれまで、くろがね線を行き交う電気機関車を何十回も撮影しているが、運転士が写っていない写真は1枚も無い。

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 これは2009年9月に撮影した戸畑発八幡行の機関車で、開放された運転室の窓から運転士の姿がはっきりと見える。この頃は、全検直後で機関車は大変綺麗であった。

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左はそのちょうど1年後の2010年9月に撮影した八幡行、右は更に1年後の2011年12月に同じ場所で撮影したものだが、どちらも窓際に運転士の姿を確認することができる。経年と共に機関車が徐々に汚れていく様子も分かる。

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これは以前別の記事で使用した第一操車場発車直後の写真だが、やはり運転室内に運転士の姿を確認することができるだろう。よく見ると、運転士は顔を進行方向右上に向けているが、なにもよそ見運転をしているわけではない。助士席側の窓上に設けられたITVカメラ(後方確認用)の映像を見て、牽引している貨車が分離していないかどうかを確認しているのである。(ITVカメラの詳細は、85ED-1形の記事を参照)

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今度はヤードの入換を見てみよう。先述のITVカメラを備えているおかげで、85ED-1形の運転士はバック運転時もカメラ映像を確認しながら入換を行えばよく、わざわざ反対側の運転台へ移動する必要は無いし、そのために車外へ出てくることも無い。しかし、くろがね線の運転士は、ヤードで貨車を連結した後、発車前に目視で連結状態を確認することになっているらしく、それが唯一地上に降りる機会となっている。この作業の間だけ、運転室は無人になる。上の写真は、運転士が前面の乗降扉を開け、連結部確認のために地上に降りる瞬間である。

このようにくろがね線では、運転士がヤードを発車する直前に貨車の連結部を確認している僅かな時間を除いて、機関車の運転室内が無人になることはないのである。

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 くろがね線の機関車の運転室は、汚れのためか遮光ガラスのためかは不明だが、光の当たり具合によっては人がいないように見えることもあるが、それは単なる目の錯覚である。上の写真でも、よく目を凝らせば、黄色いヘルメットを被った運転士の姿が見えるはずである。

 製鉄所の機関車は、テレコン(遠隔制御)化・無人化されている車両も少なくないが、その多くは入換作業の省力化を目的に改造あるいは新製されたものである。従来であれば、運転・誘導・分岐器切替のため最低3人必要だった入換作業が、テレコン化により1人で済むようになったのである。当連載の冒頭記事で述べたとおり、Y製鐵所の機関車は、入換用DLに限っても最盛期には135両の配置があったから、DLのテレコン化により単純計算で200~300人規模の人員削減効果があったわけである。

 これを踏まえてくろがね線を見てみるとどうだろう。全長およそ6kmのこの路線、仮に地上設備に相当手を入れて無人化したとしても、削減できるのは先頭と最後尾の機関車に乗務している運転士、合計たった2人だけである。したがって、くろがね線の運転を無人化したところで、コストメリットはほとんど無いといえる。

 民間企業は、利益を出すための投資はするが、必要ない投資はしないものである。製鉄所の鉄道も、例外ではない。くろがね線は、意味も無く無人運転を行っている近未来SFの乗り物ではないのである。

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