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2012年8月12日 (日)

【くろがね線を読み解く】第111回■三菱化学黒崎のスイッチャー、くろがね線を走る!

 JR九州 鹿児島本線黒崎駅と三菱化学黒崎事業所を連絡する、三菱化学専用鉄道。この専用鉄道で貨車の入換に使用されている三菱化学物流のスイッチャーは、Y製鐵所戸畑構内にある日鐵運輸(現 日鐵物流八幡)で全般検査を受けている。通常、専用線や専用鉄道で使用されている産業用機関車が検査を受ける場合、特に小型機関車の場合に顕著であるが、検査を施行する工場までトレーラーで輸送されることが多い。しかし、鉄道事業者のダイヤを支障しないと判断された場合は、鉄道輸送(回送)されることがある。

たとえば、かつて近江長岡駅に連絡していた大阪セメント伊吹工場専用線の電気機関車が名鉄で全般検査を受ける際には、東海道本線を甲種輸送されていたし、2012年現在でも、倉賀野駅・熊谷貨物ターミナル駅で入換に使用されている高崎運輸(現 JR貨物北関東ロジスティクス)の機関車は、JR貨物の列車によって大宮車両所まで回送されている。

 さて、その夢を見たのはとある夜。日鐵運輸で検査を受けるため、三菱化学物流のスイッチャーがくろがね線を走行して戸畑へ回送される、という内容であった。


より大きな地図で 三菱化学物流スイッチャー回送ルート を表示

回送ルートを可視化すると、ちょうど上図のようになる。赤いマークの場所から黄色いマークの場所への回送で、その内訳は、

  1. 三菱化学専用鉄道 黒崎事業所→JR黒崎駅
  2. JR九州 鹿児島本線 黒崎→黒崎分岐(西八幡)
  3. Y製鐵所専用鉄道 西八幡→八幡第二操車場→戸畑第一操車場
  4. Y製鐵所構内鉄道 戸畑第一操車場→日鐵運輸

となる。3のY製鐵所専用鉄道のうち、電化区間である八幡第二操車場→戸畑第一操車場間がくろがね線である。 

早速格安航空会社の空席をチェックしてみると、2012年8月7日の羽田→北九州便、翌8日の福岡→成田便(後述)に空席があったため、訪問してみることにした。

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 八幡駅前の某ホテルに泊まった翌朝、例によって徒歩5分の場所にあるレンタサイクルの無人スポット で自転車を借り、一路黒崎駅へ。相互リンク先の奥野さんと、駅ホームで待ち合わせることに。9時頃になると、JR貨物の171列車が到着した。荷はなく、EH500-70単機であった。

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すると、三菱化学黒崎事業所から、スイッチャーが姿を現した。新潟鉄工所製の35t機D353が、無動力の日本車輌製造製35t機D352と、交検コキを連ねて駅へと入場した。

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三菱化学専用鉄道のスイッチャーは2両あるが、姿形がよく似ているため1両しかいないと思われることもある。しかしよく見ると、ラジエーター、ヘッドライト形状などが異なっているため、識別は容易である。

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D352を切り離し、D353は小倉側へと引き上げていく。この角度から見ると、D352と353の相違点がよく分かる。普段は2両並ぶことはないから貴重な構図である。

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171列車のEH500がD352に連結され、後ろのコキが切り離された。

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上り貨物列車(2012年3月改正ダイヤでは1052列車)を1本やり過ごすと、EH500+D352の回送列車が西八幡に向けて発車した。西八幡は、厳密には黒崎駅構内であるため、EH500の進行方向向かって右側のテールライトが点灯し、入換運転扱いとなっている。

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普段はレール輸送用チキ(返空)を西八幡へ運ぶための構内入換運転なのだが、今日はD352の回送のための運転となっている。構内入換運転のため、営業キロの設定されていない区間に運賃は発生せず、甲種輸送とはならない。

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 一旦奥野さんと別れ、国道3号線に出てレンタサイクルを飛ばすと、西八幡で追いつくことができた。D352に添乗していた方が、スイッチャー内の運転台を確認している。

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EH500が切り離されると、

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Y製鐵所の入換用スイッチャーとの並びを見ることが出来た。

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本日の入換担当は、普段の日立製45t機D442ではなく、同じ日立製のD445である。

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D445に乗ったY製鐵所の運転士は、D352へ接近して一旦停車し、

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地上に降りて、このように連結面を目視で確認しながら連結を行った。D445は、D442同様にリモコン制御に対応しているため、入換作業はワンマン化されている。

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D445に牽引され、D352が製品倉庫東ヤード へ向かっていった。すぐに八幡第二操車場に向けて発車してしまうのかと焦ったが、

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機回しをしただけで、再び定位置の落書きワム前へと戻ってきた。運転士が降りて詰所へ入ってしまったため、暫く動きがないと判断し、再び奥野さんと合流して駐車場に下りてみることにした。

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三菱化学物流のスイッチャーと、Y製鐵所のスイッチャーが、重連を組んで走行することはめったにない。非常に貴重なシーンである。

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三菱化学専用鉄道は、黒崎駅西側で鹿児島本線と分岐してからすぐに工場へと入ってしまうため、このように真横からスイッチャーを見られる場所が無い(黒崎駅ホームからでは距離が近すぎる)。

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製鐵所の機関車は貫通ブレーキの引き通しを持たないため(機能としては存在するがブレーキホースを備えない)、D352とD445を繋ぐのは連結器だけで、BPのホースは繋がらない。

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背後は完成間近の国道3号黒崎バイパス。本来は、裏側の製品倉庫の壁面に製鐵所のロゴが大きく描かれているのだが、道路が邪魔をして見えなくなってしまった。

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D445は予備の機関車であり、こうして外部から撮影できる場所まで出てくることはめったにない。D352と重連を組んでいることとあわせ、非常に珍しい場面である。

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D445の銘板。この機関車は以前の記事 で紹介済みである。1975年(昭和50年)日立製作所製の45t機で、エンジン形式はDMF31SB、出力500ps、トルコンはDBG138である。製造番号は20609010と8桁になっている。理由については、既に別記事で解説している ので参照されたい。

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 昼過ぎになると、詰所からスタッフが出てきたため、奥野さんと別れてレンタサイクルで裏側に回りこみ待機することにした。13時前、音もなく突然現れたD445+D352。

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西八幡からY製鐵所へ入る直前に、幹線道路を橋梁で横断する。Y製鐵所専用鉄道にある下路トラス橋梁は、ここと、枝光駅近くにあるものの2つだけである。普段は、この道路は大型トラックが頻繁に通過するためまともに撮影できないのだが、奇跡的に信号が赤になり、交差点からクルマの姿が消えた。

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今回のベストショット。西八幡からY製鐵所構内にある第二操車場へ向かうD445+D352。レール輸送用の貨車を運ぶときよりも幾分遅い速度で慎重に進んでいった。

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 レンタサイクルで移動すると、奥でスイッチバックした編成が再び姿を現した。今度は先頭がD352、後ろからD445が推進運転している。運転士はもちろん先頭のD352のステップに乗り、後方のD445をリモコン制御している。

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Y製鐵所専用鉄道を、三菱化学専用鉄道のスイッチャーが走行している。編成はいよいよ、くろがね線の出発地、第二操車場へと入線する。くろがね線の八幡側(枝光付近)は障害物が多すぎるため、戸畑側へ先回りすることにした。スペースワールド駅前のスポットに自転車を返却し、八幡駅前からタクシーに乗った奥野さんに拾っていただき、一路戸畑側へ向かう。

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 普段この場所に来るときは、小倉からレンタサイクルで来ることが多いので、タクシーで来ることはめったに無い。早く着きすぎたのか、1本目の戸畑行きには連結されていなかったが、16時頃現れた2本目の戸畑行きに、D352の姿があった。先頭は普段通り85ED形だが、

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鉄スクラップを積んだダンプカーの後ろ、後部補機70DD形の前位に、D352の姿があった。回送車両をELとDLで挟むのは、八幡の機関車を戸畑で検査する際と同じである。

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並んで連結されていると、その大きさも直感的に比較できる。D352の屋根高さは後ろの70DD形とさほど変わらず、意外と大きいことが分かる。

そしてこのシーンは、くろがね線の線路がJRと繋がっている何よりの証拠である。

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後追い。この後、あらかじめ呼んでおいたタクシーに乗り、戸畑第一操車場に向かうと、

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ちょうど入換の真っ最中であった。左が到着四番線に到着したばかりのD352、右が発送七番線を使用して機回し中の70DD形D704、中央は発送六番線でカバー台車を入換中の60DD形。産業用機関車がヤード内に並ぶ。

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70DDが八幡行き編成の最後尾に回り込む頃、85ED形が回行線を走行してきた。発送六番線の貨車を牽引して八幡に向けて出発すると、

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ようやくD352の姿を見ることが出来た。普段はJRの貨車しか相手にしていないスイッチャーが製鐵所の貨車に囲まれる光景も大変珍しい。第一操車場に到着した貨車は、行先別に切り離されて順次運ばれていくため、編成最後尾のD352が到着後すぐに発車することはない。

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先頭のカバー台車に引き続き、今度は前位に繋がれた鉄スクラップ積載のダンプカーが切り離され、スクラップヤードへと運ばれていく。

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迎えの機関車を待つD352。操車場にしばしの静寂が訪れる。

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17時前になると、ようやく日鐵運輸の機関車工場から迎えの機関車がやってきた。充当されていたのはD612で、初めて見る機関車である。D612は「戸・八」札や運用札を一切掲出していないため、この日に非番だった機関車が手配されたのかもしれない。

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いよいよお別れの時。D612+D352が、第一操車場を発車する。

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1日がかりとなったが、大変興味深い車両回送を見ることが出来た。三菱化学黒崎事業所から日鐵運輸までの総移動距離はおよそ13km。この回送運転のために、合計6両もの機関車が牽引にかかわったことになる。なお検査終了時は、逆ルートで戸畑から三菱化学へと返却回送されることになるが、西八幡→黒崎間でスイッチャーを回送する170列車の発前入換が朝9:30頃であるため、返却回送は1日では終わらない可能性があるので留意されたい。

●LCCを活用する

 今回の九州行きが成功した要因として忘れてはならないのが、LCCの台頭である。

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■乗客搭乗中の成田行き最終便。駐機場までは徒歩で案内。 2012年8月8日、福岡空港

今回予約できたJetstar福岡→成田便の座席は、通常運賃に¥850の追加料金が必要なエキストラ・レッグルームと呼ばれるシートピッチの広い座席であった。非常扉付近の座席は、扉の開口幅を確保するため、ほかの座席よりシートピッチを広げざるを得ないため、その部分だけグレードの高い座席として販売しているわけである。これがなかなか快適であった。なにしろ、座って両足を伸ばしても、前の座席の背中に足が着かないほどゆったりしているのである。あと数cm横幅が広ければ、新幹線のグリーン車の座席と比較しても遜色ないといえよう。

CAの応対も非常に洗練されていて、若いスタッフが多いのによく気配りが行き届いていた。英語の機内放送も、大手航空会社の国内線のようにカタカナ英語ではなく、さすが外資系と思わせる流暢なもの。機内サービスについては、私は何も期待していないのでまったく問題は無かった。飲み物が欲しければ、搭乗前にペットボトルを購入して持ち込めば済む話で、わざわざ機内で割高な飲料を購入する必要性は皆無である。

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■福岡空港内の自動チェックイン機。操作は大変シンプルで、大手航空会社より分かり易いほど。

 ところで、移動中のサービスレベルは問題ないとして、利用者が一番気にするのはやはり発着地のアクセスであろう。羽田空港から私の現在の自宅最寄駅までは、エアポート快特で70分前後かかるのだが、成田空港ならばアクセス特急で40分前後とかなり近い。しかも幸いなことに、京成電鉄がジェットスターとタイアップ して夏休み期間限定の臨時列車を走らせている というから、至れり尽くせりである。私の場合は、この臨時列車が無くても上り終電に間に合うので問題は無いが、東京都下や神奈川・埼玉方面にお住まいの方には朗報ではなかろうか。好評ならば、今後のダイヤ改正時に定期列車化もあり得るかもしれない。

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■福岡空港のジェットスター顧客対応カウンター。
  外資系だけあってパツキンのチャンネーの姿も。(撮影許諾済)

なお今年の11月3日、例年通りであれば福岡県大牟田市で炭鉱電車の公開イベントが開催される見込みである。加えて11月2日から4日までの3日間は、起業祭なるY製鐵所のイベントも控えている。例年飛び石となるためどちらも訪問できなかったが、LCCを最大限活用して、今年こそは訪問するつもりである。

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コメント

社長さまはじめまして。奥野さんのところから飛んできました。
小倉からレンタサイクルとは結構距離ありそうですが、レンタサイクルがあるとは
知りませんでした。
黒崎はいつもチキだけ撮って移動してましたが、結構楽しいところが沢山あるんですね。
次回行ったときはもう少し時間かけて見てみようと思います。

投稿: ヘッポコ出戻りモデラー | 2012年8月20日 (月) 13:37

ヘッポコ出戻りモデラーさんこんにちは
こちらこそ、変圧器の記事、興味深く拝見しています。

ご参考までに、レンタサイクルに関する過去記事にリンクをはりました。
小倉駅前からの所要時間は、戸畑第一操車場、夜宮の撮影場所ともに15分ですので、それほどでもありません。電動なのでその時間で走れます。
私はいつも、小倉駅前→(15分)→第一操車場で撮影→(20分)→夜宮で撮影→(10分)→JR九州小倉工場で撮影→(5分)→西小倉駅前で返却というルートで周遊しています。同じ場所に返却しなくても良いのがポイントですね。

投稿: 社長 | 2012年8月21日 (火) 12:51

この区間
鹿児島本線の車窓からはイヤというほど製鉄所関係の線路が見えたのに、いまでは寂しい限りです。
「くろがね線の線路がJRと繋がっている何よりの証拠である。」
という記述に線路への愛を感じました(笑)

投稿: LUN | 2012年9月 4日 (火) 21:18

LUNさん、はじめまして(でしょうか?)
コメントありがとうございます。

私は親の実家が鹿児島ということもあり、盆正月になると九州ブルトレに乗って鹿児島へ帰省するのが毎年恒例の行事でした。記憶にはっきり残っているのは1980年代以降ですが、当時はまだ枝光-八幡-黒崎間の国鉄の線路の北側は製鐵所の敷地で、国鉄の線路との間には高い塀があったり視界を遮るように木が植えられていて、車窓からはあまり線路が見えなかった記憶があります(途中下車して探せば撮れる場所はあったかもしれませんが)。

製鉄所が縮小し、東田地区の再開発に伴いJRがルート変更してくれたおかげで、八幡側は撮れる場所が何箇所もできました。第一操車場も、私が初めて訪問した頃はいまの駐車場の場所にまだ線路があり、現在のようにヤードの北側まで回り込むことは出来ませんでした。

ですので、機関車の数はだいぶ減りましたが、条件はそう悪くはなっていないのかな、というのが実感です。製鉄所が縮小して見えなくなった例としては、J社の千葉やN社の広畑・室蘭・S社の小倉などがありますね。

JRとくろがね線がつながっている件に関しては、以前編集長敬白のブログに「専用鉄道といってもまったく他線と連絡しない独自の存在」と記載されていたので、正しい情報を伝えるためにあえて書いています。


ところで、貴ブログの常陸多賀の記事を拝読しました。
わたしも朝から現地にいたのですが、写真を見る限り、すぐ隣りにいた場面も…(笑)
2004年にイタリアのフィレンツェを訪問されていたり、けっこうあちこちでニアミスしていますね。
今後ともよろしくお願いします。


投稿: 社長 | 2012年9月 5日 (水) 23:27

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