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2012年8月22日 (水)

★365000アクセス突破★大阪環状線に学ぶ、103系KER6ジャンパ栓納めと引き通し

 103系直流通勤型電車は、私の好きな系列の一つです。首都圏から姿を消して久しいですが、関西や広島などJR西日本管内ではまだ現役で活躍中です。無論、弊ブログで撮影ガイドなど企画するはずもなく、今回のテーマは「ジャンパ連結器」を車体に固定するために設けられている「ジャンパ栓納め」です。

S10300

 電車が走行するためには、運転台のある制御車から、主電動機を制御するための主制御器を搭載した車両に対して、引き通し線を介して電気指令を伝達する必要があります。このため、車両同士を連結する際は、連結器同士を接続するだけでなく、引き通し線の接続も必要になります。引き通し線の接続に使用されるのが、ジャンパ連結器(ジャンパケーブル)です。

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ジャンパ連結器は、国鉄新性能電車の場合、(一部の例外を除き)各々の車両の奇数向き(東海道本線を基準とした場合の上り向き)に取り付けられており、隣接する車両のジャンパ栓と連結します。したがって、上の写真のように常時奇数向きの編成端に連結されている車両の奇数向きには、常時未使用のジャンパ連結器がありますので、これを垂れ下がらないように固定しておくため、車体側にジャンパ栓納めが設けられています。

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201系を例に見てみましょう。201系は、先頭車を含めて全車両が片渡り構造で製作されました。奇数向き偶数向きどちらの先頭車も、引き通し線が山側にしかないため、その顔つきには大きな相違点があります。奇数向きのクハ201形(左写真)にはジャンパ栓収めがあり、ケーブルが納められていますが、偶数向きのクハ200形(右写真)には栓納めもケーブルもありません。

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これに対し、103系の場合は、先頭車のクハ103が新製当初より両渡り構造で製作されたため、奇数向き・偶数向きどちらの先頭車もジャンパ栓納め(KER6)を標準装備しています。上の写真では、左側が奇数向き(大阪環状線外回りの先頭車)クハ103-843、右側が偶数向き(内回りの先頭車)クハ103-802ですが、両者の相違点はジャンパケーブルの有無だけです。偶数向きに連結されている802も両渡り構造であるため、奇数向きに供されても都合が良いように栓収めを備えているのです。

●ジャンパ栓納めの無い103系先頭車

 さて、いよいよ本題です。もし貴方の周りに103系マニアがいたなら、こんな質問をしてみましょう。

  • 「103系の先頭車でジャンパ栓納めの無い車両はありますか?」

大抵のマニアは、すぐにこう答えるでしょう。

  • 「クハ103形500番台とクモハ102形には無い」

クハ103形500番台は、京浜東北線向けに投入が開始された偶数向きの片渡り構造車です。編成の奇数向きがクモハ103形であることから、両渡り構造にする必要がなく、新製当初より偶数向き片渡り構造、ジャンパ栓収め無しで落成しています。

いっぽうクモハ102形には、営団地下鉄東西線直通用に新製された1200番台と、筑肥線用1500番台6連を3+3連に分割するためにモハ102形に運転台を取り付けた改造車、さらにクハ79形600番台から改造された川越線用の3000番台、そしてJR西日本の播但線向け改造車3500番台、加古川線向け改造車3550番台があります。いずれも、モハ103形とユニットを組む電動車で方転する必要が無いことから片渡り構造で、偶数向きに設けられた運転台の下にはジャンパ栓納めはありません。

しかし、実は103系にはほかにもジャンパ栓納めのない先頭車が存在するのです。

●ATC車上装置搭載による運用制限、事実上の片渡り化

 営団地下鉄千代田線直通用の103系1000番台は、モハ4ユニット8両をクハで挟んだ10両固定編成で新製投入されました。編成両端のクハは、奇数車番車が奇数向き、偶数車番車が偶数向きに連結されました。クハ103形は本来両渡り構造のはずですから、ふつうに考えれば両端のクハはいずれもジャンパ栓収めを備えていそうに思えます。しかし実際にクハ103形1000番台を観察してみると、奇数車番車にはジャンパ栓収めがありますが、偶数車番車にはないのです(永尾さんのこちらのページ に掲載された各写真を比較してみてください)。

 さらに、クハの正面床下、連結器両脇を観察してみると、これがまた興味深い。奇数車番車・偶数車番車いずれも、ジャンパ栓は山側にしか設けられていない(両端のクハの正面写真を横に並べると、ちょうど左右対称になっている)のです。つまり、103系1000番台は、冒頭で紹介した201系同様、先頭車を含めて全車両が片渡り構造で製作されている可能性が高いのです。これはなぜでしょうか。

 ここからは私の推論になりますが、クハ103形1000番台の片渡り設計はATCの搭載と無縁ではないと思われます。営団地下鉄千代田線・常磐緩行線に導入されたATC4型は、その後山手線・京浜東北線に導入されたATC6型同様に車内信号方式を採用しており、2本のレールに流れる信号電流(もちろん交流)を車上装置で受信して運転台に制限速度を現示し、実際の速度が制限速度を超過した場合に自動的にブレーキをかけるシステムです。信号電流は、各制限速度毎に固有の周波数がアサインされていますが、上りと下りでは搬送周波数が異なります。したがって、ATCの車上装置は上り用・下り用が区別され、上り用の装置を搭載した上り向きのクハ103形を方転しても、下り向きの先頭車としては使用することができないのです。つまり、ATC使用線区内におけるクハ103形0番台は、事実上の片渡り構造車というわけです。

 地上線用のクハ103形0番台は、269番以降の多くの車両が高運転台+ATC標準装備ないし準備工事済で落成しました。これらの車両は、ATC区間においてはそのままでは方転して使用することができませんが、将来の転属を考慮すると、非ATC線区では従来通り方転して使用できるため、両渡り構造のまま製造が続けられたものと思われます。これに対してクハ103形1000番台は、特定線区向けで、将来非ATC線区へ広範に転用することはあまり考慮されていなかったのではないでしょうか。このため、奇数向き・偶数向きのクハ103形1000番台は、それぞれ方転不可能な片渡り構造車として製造されたものと思われます。想像の域を出ませんが、ジャンパ栓納めひとつから色々仮説を立てて検証してみるのも面白いのではないでしょうか。

 なお直接ATCとは関係ない事例として、豊田電車区所属の偶数向きクハ103形0番台の中に、ジャンパ栓納めのない車両が何両かあったのを覚えています。これについては、新製時に装備していたものを後年になって撤去したのか、はたまた新製時から省略されていたのか、よく分かりません。どなたか、103系に詳しい方のコメントを期待したいところです。

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