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2013年1月21日 (月)

プッシュプルトレインに関する雑感

 今日は月刊鉄道雑誌の発売日。ちょうど仕事の都合で午前中外出する機会があったので、昼休みを利用して本屋で物色。

鉄道ピクトリアルアーカイブスコレクション24「貨物輸送1960~70」は即購入するとして、目を惹いたのがレイルマガジンに掲載されていた岩成政和氏によるプッシュプルトレインの解説です。鉄道用語が拡大解釈されて本来の意味とずれてくるというのは時々ある話で、ものによっては私も気になることがありますが、原則論と趣味的な観点のバランスがよく、興味深い記事になっていました。

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■Wendezug von DBAG  27-4-2012, DuisburgHbf - EssenHbf

 上の写真は、ドイツ鉄道のインターシティです。編成の先頭(左写真)にSteuerwagen(シュトイアヴァーゲン=制御車)が連結され、最後尾(右写真)に連結された101形電気機関車を遠隔制御し、160km/hの猛スピードで推進運転しています。

欧州ではこのように、ドイツやスイスを中心に幹線の優等列車(インターシティ)から亜幹線の各駅停車(レギオナルバーン)に至るまで、プッシュプルトレインが一般的です。最近では電車や気動車など動力分散方式の編成が増えていますが、輸送力をより柔軟に調整できることから、現在でもプッシュプルの編成をよく目にします。岩成氏も言及しているように、このような運転形態の列車は、振り子のように行ったり来たりすることからPendelzug(ペンデルツーク)と呼称されています。ただしドイツではこの用語の指す範囲が広く、特定の区間を往復しているシャトル列車のようなものも含まれることがあるため、より限定的な意味で表現されるときにWendezug=ヴェンデツークと呼称されることが多いようです。

Wendezugが登場した第一の理由は、頭端式(行き止まり式)のターミナル駅が多い欧州においては、到着→発車時の機関車付け替えを省くことが、列車の円滑な運用を行ううえで重要であるからにほかなりません。日本でプッシュプルトレイン(…と鉄道趣味者から呼称されるもの)が成立するのは、機回しができないあるいは面倒だとか、橋梁の重量制限がある、といった地上設備の制約が主な要因になっています。ターミナル駅の構造も地上設備の制約といえなくもないですが、プッシュプルにしなければならない理由が日本のそれとは大きく異なっている点に注意する必要があります。

 本来のプッシュプルトレインは、動力車(機関車や運転室付の電車・気動車)が付随車を伴っている編成を暗黙の前提として(このあたりがいかにもヨーロッパ思想)、編成の反対側(運転室の無い側)にも運転室を設けて前後に走れるようにした列車(編成)のことです。日本の法規には明確な規程がないかもしれませんが、実は日本工業規格にはっきりと定義されています。JISハンドブック鉄道2012には、「プッシュ・プル列車」について次のように示されています。

一方に機関車,他方に制御車を配置した列車で,
編成の組換えなしにいずれの方向へも運転ができる列車。

この観点から、プッシュプルトレインという用語の意味は、日本に持ち込まれる際に変質したのではなく、日本で使用されるうちに拡大解釈されるようになったというべきでしょうね。

さらに付け加えるなら、ドイツでも客車の前後に機関車を連結し、機回し無しで往復できるようにした編成もまたWendezugと呼ばれている現実を踏まえる必要があります。

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■Wendezug mit Zweiloks,  1-5-2012,  Koblenz

前述のとおり、電車や気動車が増えた結果、機関車が余り気味のドイツでは、客車に制御機能を持たせるくらいなら、あまった機関車を制御車代わりに連結してやれということで、上のようないわゆる日本風プッシュプルトレインも運行されています。こういった編成は、亜幹線のレギオナルバーン・レギオナルエクスプレスを中心に時折インターシティにも見受けられます。インターシティ用客車を101形電気機関車でサンドイッチした編成を見たこともあります。かような実情に鑑みれば、JIS規程の「制御車」を「制御機能を持った車両」と拡大解釈し、機関車2両で客車や付随車を挟んだ「プッシュプルトレイン」も許容するのが自然な流れでしょう。

 言葉は生き物ですから、時代が変われば意味・用法が変質するのは避けられません。例えば「独壇場(どくだんじょう)」という単語がありますが、これは元々「独擅場(どくせんじょう)」でした。手へんを土へんに誤用したことがきっかけで広まり、現在では国語辞典にも載っている単語です。要は、本来の意味・用法を理解しているのかどうかが重要なのであり、分かったうえで使っていればそれほど大げさな議論するような問題でもないと考えます。

ラテン語ベースで欧州各国の人々には馴染みやすい筈のエスペラント語が、新語の発明を認めないという性質ゆえに、言語としての汎用性を失い普及していないのも、言葉本来の性質を殺していることに因ると私は考えます。国語学者が何と言おうと、役所がどのような法令を定めようと、鉄道趣味者の間で広く共有されている単語(ないし新しい意味・用法)は、認めていくしかないでしょう。欲を言えば、本来の意味が共有されているという前提は欲しいところですが。

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