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2013年9月 1日 (日)

【くろがね線を読み解く】第145回■N社H製鉄所の機関車

  姫路の話題を取り上げたついでに、こちらの話題も。H製鉄所では、毎年お盆の後に開催される同所主催のスポーツ大会にあわせ、工場見学会が実施されている。毎年日程が分からなかったため先延ばしになっていたが、今年は見学会の参加方法を事前に製鉄所側に確認済み。当日朝、まずは朝一で川の対岸から機関車を眺めることにした。

D50201

 姫路駅からの足は「駅りんくん」。かつてH製鉄所の原料・製品を輸送していた播但線支線(飾磨港線)の廃線跡がそのままサイクリングロードになっており、途中の信号機も片手で数えるほどしかないため、旧飾磨駅跡までは10分程度で到着する。そこからH製鉄所専用鉄道 (民鉄要覧昭和57年度版によると、全長2.5km)の廃線跡の北側を西進し、夢前川を渡る直前で左折して川沿いの緑道を南下すると、この場所にたどり着くことができる。着いて10分程度だろうか、転炉の方から鋼滓鍋車を連ねた編成が、オレンジ色のDLに牽引されてやってきた。

鋼滓鍋車は7両編成。H製鉄所にはすでに高炉はないが、鉄スクラップを原料とする冷鉄源溶解炉から転炉へ銑鉄を移す際、溶銑鍋の中に酸化カルシウム(生石灰)を投入して脱硫を行っているため、鋼滓(スラグ)の輸送は依然として必要なのである。

D50202_2

ここで安物カメラの本領発揮。35mm判換算で720mmまでズームできるというイカれた性能だが、こういう用途には最適。このクラスの望遠レンズを一眼で揃えようとすると100万円は下らない。

やってきたのはD-502と命名された2軸ボギーの箱型機関車。運転室は無く、車体の前後に簡易運転台を備えている。ラジエーターは1基で、屋根の上にファンの軸がかすかに見えるので、車体両側から吸気して上部へ排気する国鉄DD13形111号機以降と同じ冷却構造である。日車の車両史の図面集と写真集に、この機関車が掲載されており、諸元をピックアップすると…

  • 記号番号   : D502
  • 運転整備重量: 50t
  • 全長      : 12,000mm
  • 幅        : 2,700mm
  • 高さ       : 3,330mm
  • 軌間      : 1,067mm 
  • エンジン    : 神鋼造機 DMF31SB
  • 液体変速機  : 神鋼造機 DS1.2/1.35
  • 台車      : 日車NL25
  • 製造年    : 1975年(昭和50年)
  • 製造所    : 日本車輌製造
  • 製造番号   : 3239

…となる。エンジン・液体変速機ともにDD13と同じである。

日車が製作した製鉄所向けの機関車が完全な箱型になったのは、実はH製鉄所向けのD501(1974年製造、製造番号3130)が最初。写真のD-502はその増備車で、屋根上に設けられたライトや無線アンテナなどの突起物が車体中央寄りに寄せられたほか、遮熱板に断熱材を入れるなど若干の改良がなされている。その後、ほぼ同型のD503~504も製作されている。

また1980年(昭和55年)以降は、飾磨駅に連絡するH製鉄所専用鉄道の入換用として、当機をベースに中央に運転台を設けた凸型の50t機D-505~507(製造番号3325、3373、3379)も製作された。この凸型機関車は、他の箱型機関車とは異なり貨車の授受のために国鉄の駅まで出ていたので記録も多く、のちに非電化された国見山鉱山鉄道の牽引機としてD505と507の2両が譲渡され、旧南海の電気機関車に代わって活躍し注目を集めた。

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 ところで、見学バスに乗るには事前に整理券をゲットしておく必要があるので、9時頃に一旦撤収して旧体育館裏の受付で整理券をもらうことにした。再び同じ場所に戻ってみると、今度は70t機D-709が空車のスラブ用台車12両を牽引して連続鋳造工場の方へ向かっていくのが見えた。空車を持っていくということは、荷を積んで戻ってくると考えるのが自然である。そこでしばらく待っていると…

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20分ほどして、案の定戻ってきた。持って行った空車に積んだのか、空車を持って行って代わりに既に積み込みの終わった実車を連れてきたのか、貨車の番号がすべて読み取れないので定かではないが、両数は往復とも同じ12両編成であった。

D70902

70t機D-709は、1974年にD501とほぼ同時に製作された姉妹機D704~705(製造番号3165~3166)、およびその増備車D706~708(製造番号3257、3265、3266)をマイナーチェンジして増備された車両で、諸元は以下のとおり。

  • 記号番号   : D709
  • 運転整備重量: 70t
  • エンジン    : 神鋼造機 DMF31Z
  • 液体変速機  : 神鋼造機 DS1.2/1.35
  • 台車      : 日車NL30A
  • 製造年    : 1977年(昭和52年)
  • 製造所    : 日本車輌製造
  • 製造番号   : 3275

竣工時は主に高炉-転炉間の溶銑輸送に使用されていた。1993年に高炉が無くなると、線路網は大幅に縮小され、製鉄所の西側1/3ほどが遊休地となった。現在では、50t機と特に区別無く使用されているようである。

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上の写真の場所は、障害物はないものの台車は隠れる。いっぽうもう一つ上の写真の場所は、手前の樹木が邪魔だが台車まで見えるので、全体の雰囲気は伝わりやすい。


D70904

 DLの後ろに12両連なっているスラブ輸送台車だが、くろがね線のものと比較すると台枠が異常に厚く、どうみても注入台車からの転用と思われる。スラブを支えているスキッド(台座)はおそらく後付けであろう。

H製鉄所の高炉に火が入ったのは戦前の1939年(昭和14年)で、まだ当時は連続鋳造の技術が無く、転炉から圧延まで行く間に造塊というプロセスがあったので、注入台車が必要であった。現在ではすべての一貫製鉄所に連続鋳造設備が導入されているため、一部の用途を除き注入台車は不要になっている。このためどの製鉄所でも注入台車はだぶつき気味で、このように他の荷を運ぶ貨車に転用されることもある。注入台車は1970年代後半まで作られているので、新しいものなら古いスラブ輸送用台車を置き換えるには好都合であろう。

D70904aslub

工場の前には、見慣れたスラブ輸送用台車の姿も。これが本来の形。

D70905

スラブ台車12両を牽引して熱延工場へ向かう。しらばく観察してわかったのは、この製鉄所は機関車を必ず進行方向先頭に連結して貨車を牽引するということ。製鉄所の構内では、編成の最後尾に機関車を連結し、運転士は先頭の貨車に乗り込み、最後尾の機関車を遠隔制御して推進運転することも珍しくないが、この区間ではなぜかそういった運用は行われていない。

 スラブ台車を牽引して熱延工場へ向かった機関車は、見えなくなってからもピーピー汽笛を鳴らして入換を行っているのでしばらく待ってみると、

D70911

単機で手前まで出てきた。運転士は反対側に乗り込むと再び奥へ行ってしまったので、これは貨車の引き出しがあるかなと期待していると、

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狙い通りにスラブ台車6両を連ねて出てきた。編成が「く」の字型に曲がり、かなりの急カーブであることが分かる。残りの6両に積まれていたスラブはおそらく熱延工場に取り込まれて圧延ラインに向かったと思われる。

D70913

昆虫の触角のようなヘッドライトを点灯し、北側に出てくると、

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運転士が途中で降りてしまった。そのまま遠隔制御で列車はさらに北側へ進み、

D70915

この位置まで出てきた後、スイッチバックして川沿いを南下して行った。

 このあとバスで見学して気づいたのだが、川沿いの南側には、スラブを積んだ貨車を留置するためのヤードがあり、どの線路も南端が車止めで行き止まりになっており機回しができる配線ではなかった。わざわざ熱延工場の方で機回しして手前まで出てくる理由が、見学することによって理解できた。

●無軌条化されているコイル輸送

D70921 

熱延工場から先のコイル輸送は、残念ながら鉄道は使用されておらずキャリアパレットカー(パレットキャリアカー)を用いた無軌条輸送システムによる。この車を目で追っていくと、夢前川に架けられた構内道路専用の橋梁(通称:くろがね橋)を渡り、左岸にある電磁鋼板の工場へと吸い込まれていった。電磁鋼板の工場は専用鉄道の廃線跡のすぐ南にあるので、かつてはこのコイル輸送も構内鉄道によって行われていたのかもしれない。

【参考】

  • 『鉄と鉄鋼がわかる本』新日本製鉄(株)編著、日本実業出版社、2009年。
  • 『日車の車輌史 図面集 戦後産業車両・輸出車両編』日本車両鉄道同行部、鉄道史資料保存会編、1999年8月。

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コメント

当の関係者です。(笑) 来られていたんですね。

で、いつものごとく、誤記がありますので・・・・ (ここまでで止めておきます)

投稿: たた | 2013年9月 2日 (月) 23:03

たたさん
はじめまして
誤記とのご指摘がありましたが、どの場所かわからないのでとりあえず思い当たる部分を修正しました。
建設的なご指摘は大歓迎ですので、コメントいただけないような内容でしたら、プロフィールのメール送信でお送りいただけるとありがたいです。

投稿: 社長 | 2013年9月 3日 (火) 00:01

最初に見たときに、一番に疑問がありませんでしたか? なんで○○○なんやろか? とは。この画像どれをを見ても分かります。(変化したのも、確か数年前です)
ちなみに、ブレーキシューであれば、そこら辺に寿命が尽きたものが転がっていました。


あと、姫路モノレールも修正してくださいね。

投稿: たた | 2013年9月 4日 (水) 23:29

たたさんこちらでもこんにちは
コメントありがとうございます。

>最初に見たときに、一番に疑問がありませんでしたか? なんで○○○なんやろか? とは。この画像どれをを見ても分かります。(変化したのも、確か数年前です)

とのことですが、車体の色が青から朱色に変わったことですか?
でも、それはあえて言及していないだけで誤記ではないですし…。
表現がモワっとしててよくわからないです。私の読解力がないのかな?? すみません。

投稿: 社長 | 2013年9月 5日 (木) 12:56

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