【くろがね線を読み解く】第201回 ■150mレール輸送列車
2015年3月のダイヤ改正より、黒崎発東京貨物ターミナル行の150m長尺レール輸送用列車が運行を開始した。東海道新幹線用の150mレールを、製造元であるY製鉄所から輸送するための列車で、2015年3~5月現在の運行実績は、黒崎発隔週日曜日である。黒崎→北九州タの上りは改正前同様の170列車、北九州タ→東京タは最高速度95km/hの8090列車として運行される。
JR東海の新幹線用レールセンター・保線基地のうち、150mレールの受入(荷役)に対応しているのは、いまのところ浜松レールセンターだけであるため、150mレールの着駅は西浜松である。西浜松→東京タで8090列車が運行されているのは、静岡貨物、相模貨物、東京貨物ターミナル向けの50mレールを輸送するためである。
上写真は、2015年5月24日に黒崎を出て北九州タへ向かう170レである。東京タ寄り(機関車次位)から順に、まず東京駅品川保線区(東京貨物ターミナルに隣接)向け50mレール28本を積載したチキ5500×3両が連結され、続いて浜松レールセンター向け150mレール28本を積載したチキ5400、5500、5450から成る9両編成×2本が加わり、合計21両編成の長大編成となった。編成全体の荷重は単純計算で588tにも及ぶ。チキ5500の積車換算は4.0、チキ5400・5450の積車換算は4.5だから、編成の積車換算両数は4.5×6+4.0×15=87である。
東京駅品川保線区で150mレールの荷卸しができるようになれば、東京貨物ターミナル行も運行されるようになるだろう。 この日は東京へ戻りながら170レ→8090レを追いかけることにした。(注)2016年現在、JR東海向けの150mレールはすべて浜松レールセンター行となっています。
小倉から各駅停車を乗り継ぎ、某駅からあらかじめ呼んでおいたタクシーに乗り10分(¥1,320-)、山中で下車徒歩3分でこの場所へ。8090レの幡生→東京タ間は吹田機関区の電気機関車が牽引するが、臨時貨物列車のため、EF200であったり、上写真のようにEF210であったりする。編成は、東京タ寄りから順に以下の通りである。赤が東京タ行50mレール積載車、青が西浜松行150mレール積載車である。
- チキ5500-13
- チキ5500-14
- チキ5500-15
- チキ5400-1
- チキ5500-16
- チキ5500-17
- チキ5500-18
- チキ5450-1
- チキ5500-19
- チキ5500-20
- チキ5500-21
- チキ5400-2
- チキ5400-5
- チキ5500-1
- チキ5500-2
- チキ5500-3
- チキ5450-3
- チキ5500-4
- チキ5500-5
- チキ5500-6
- チキ5400-6
引き続きここまで連れてきてもらった運転士に厚狭まで運んでもらい(¥1,640-)、こだまで広島へ向かうが、途中徳山で一旦ホームに降りてみる(改札から外へは出ない)。
すると、入線してくる8090レを俯瞰で迎えることができた。8090レは徳山ではホームの無い2番線へ入線し、およそ1分間停車していた。
この位置で停車。車票や特大貨物検査票を記録するなら、こういった途中停車駅を利用して効率よく調べるとよいかもしれない。(もっとも西八幡や黒崎まで行けばゆっくりチェックできるが)
ふたたび後続のひかりに乗り、今回最大の狙いである瀬野八へ向かう。時間的には、大竹-広島間でもう1回撮影してから瀬野八へ移動しても追い越して先回りできそうだが、今回はリスクを冒さず直行したので、8090レ通過の1時間30分以上前には現地へ着いてしまった(八本松からタクシーで¥1,060-)。
17時に現れた8090レ。東京駅品川保線区向け50mレールもカーブに沿って曲がるが、
浜松レールセンター向け150mレールはよりダイナミックに曲がる。
150mレール積載編成の2本目が現れる。そして後ろから力強く押しているのは…
8090レの後部補機に指定されている広島車両所のEF67。時刻が時刻だけに、夏至前後の各々1.5か月間くらい(トータル3か月間)しか撮影できない、貴重なシーンである。来年のダイヤ改正で、担当がEF210-300に変わる可能性もゼロではないから、記録するなら早い方が良いだろう。
●150mレールの輸送先
JR東海浜松レールセンター向け50mレール輸送は、今春から150mレール輸送にとってかわられた。従前の50mレールの輸送単位は、28本を1~2編成、毎週2回程度であったので、週あたり50m×84本、すべてを1本に溶接した場合の長さ4200m分のレールが運ばれていた。いっぽう、150mレールの輸送単位は28本×2編成となり、倍の8400m分のレールを運べることになる。つまり、2週間にわたり毎週2回運んでいた量を1度に運べることになる。運行が隔週なのはこのためと思われる。
ただし、レールメーカーのプレスリリースを読む限り、150mレールはJR東海以外の鉄道事業者各社へも拡販していくことを最初から念頭に置いているのは明らかで、本数が少ないのは一時的なことに過ぎない。来年度以降はどこに輸送されるようになるだろうか。
ここからはあくまでも個人的な推測になることをお断りしておくが、JR東日本なら東京レールセンター(越中島貨物)、JR西日本なら向日町レールセンターへの直送が想定される。たとえば東京レールセンター向けの場合は、現状ではY製鉄所で船積みした25m定尺レールを江東区有明にある物流子会社の倉庫(ゆりかもめの車両基地に隣接)へ船で輸送し保管のうえ、必要の都度、艀に乗せて越中島のレールセンターまで輸送している。貨車でY製鉄所からレールセンターへ直送できるようになれば、25mレールを溶接してロングレールにする手間だけでなく、輸送工程上の二度手間も解消することになる。向日町レールセンターについても、船で輸送し大阪港(安治川口駅構内の荷役設備)で陸揚げして、JR貨物の1180列車→1182列車で安治川口から梅小路(京都貨物)まで送り、そこからJR西日本の配給列車で向日町駅のレールセンターまで届けているので、やはり二度手間は解消する。
(注)別記事にて言及した2016年3月ダイヤ改正で登場するJR東海以外の鉄道事業者向け150mレール輸送であるが、JR西日本向けについては、ロングレールの荷卸しが可能な新幹線用保線基地へ直送し、向日町レールセンター行きの設定は無いようである。納入先の鉄道事業者によってレールの受け入れ方が異なり、興味深い。
●競合他社J社が対抗製品を出す可能性はない
日本国内で鉄道用レールを製造しているのは、Y製鉄所とJ社N製鉄所(福山地区)のみだが、福山も150mレールを同じように製造する可能性はあるのだろうか。答えはNOである。Y製鉄所は元々圧延設備が150m対応なのでレールは150mで圧延していたが、輸送の都合で3分割(50mレール×3)ないし6分割(25mレール×6)していたにすぎない。これに対して福山は最初からレールを50mで圧延しているので、圧延設備を改修ないし新設しない限り、150mレールを製造することはできない。
【注意】
当記事掲載の写真は、特記の無い限りすべて公道(もしくは社会通念上立入りの許される区域)から撮影したものです。無断で私有地・社有地等へ立ち入ることは絶対におやめください。
【著作権の表示】
当ブログの著作権者は、特記の無い限り、私 「社長」です。当ブログのすべての文章・写真・図面および図表は、日本国の法律(著作権法)と国際条約によって保護されています。改変したものも含めて、著作権者に無断で複製・配布することは出来ません。
| 固定リンク
「■150mレール輸送」カテゴリの記事
- 【くろがね線を読み解く】第265回 ■西浜松行限定時代の8090列車(2018.03.08)
- 【くろがね線を読み解く】第267回 ■蜜柑畑と8090列車(2018.04.08)
- 【くろがね線を読み解く】第241回■150mレール輸送列車 東鷲宮行き(2016.10.10)
- 【くろがね線を読み解く】第201回 ■150mレール輸送列車(2015.05.25)
- 【くろがね線を読み解く】第251回 ■150mレール輸送新下関着後入換(2017.10.08)
「▽くろがね線を読み解く」カテゴリの記事
- 【くろがね線を読み解く】第265回 ■西浜松行限定時代の8090列車(2018.03.08)
- 【くろがね線を読み解く】第267回 ■蜜柑畑と8090列車(2018.04.08)
- 【くろがね線を読み解く】第266回 ■小倉地区D506新塗装化&エンジン換装(2018.04.05)
- 【くろがね線を読み解く】第243回 ■レール臨貨8159列車(2017.03.13)
- 【くろがね線を読み解く】第241回■150mレール輸送列車 東鷲宮行き(2016.10.10)
コメント
北陸線の加賀笠間〜松任の新幹線白山基地に隣接する線路で、最近 金沢方より下り線→上り線→白山基地下の新設施設へのポイントが設置されています。多分将来そこからレールを搬入するのだと思います。この施設で150㍍レールが搬入されたら良いと思っています。
投稿: モビリオ | 2015年5月25日 (月) 16:22
モビリオさんこちらでもこんにちは
すっかり忘れておりましたが北陸新幹線向けの輸送も考えておかなければなりませんね。Googleの航空写真で見るとまだ工事中なので、基地内の現状がどうなっているのか気になります。ただそのための用地はありそうですね。
●北陸新幹線(JR東日本管内)
北陸新幹線のJR東日本管内については、現在高崎駅北側にある在来線保線基地から50mレールをクレーンで新幹線高架線上にある保線基地まで持ち上げられるようになっているので、当面は
今まで通り50mレールをそこから搬入?するかと思われます。
●東北新幹線
東北新幹線向けは、現在は東鷲宮(鷲宮保守基地)と岩切(仙台レールセンター)などから搬入していますが、岩切はいいとして東鷲宮は150mに対応するのか気になるところです。レールセンター以外は、50mを超える長尺レール・200mを超えるロングレールの荷役に対応していない拠点が多いので、保線基地で150mレールを扱うとなると地上設備にも手を入れなければならないのがネックですね。
●山陽新幹線
山陽新幹線向けは、ご存知のように現在でも向日町→御着の臨時工事列車により姫路新幹線保線区向け200mロングレールが搬入されていますので、そのままのルートが使えますね。黒崎からですと御着~向日町間で無駄に一往復しますが、JR西日本としても(向日町に)ストックは要るので、問題ないでしょう。なお新岩国新幹線保線区と錦川鉄道の連絡線路は既に撤去されているため、ここからの搬入は不可となりました。福山新幹線保線区へのJFE福山(東福山)からの50mレール搬入も、これまで通りと思われます(頻度は低いですが)。
●九州新幹線
以前知人の目撃情報があり、JR九州のロングレール輸送用編成(チキ5500)がY製鐵所構内を走行しているのが外から見えたとのことですので、工臨に使っている貨車をそのまま製鉄所構内へ乗り入れさせて積むのではないかと思われます。JR九州向けの25m定尺レールは、現在でも製品倉庫ではなく工場で積んでいますので、構内乗り入れは問題ありません。150mレールの場合積む場所は変わりますが。
北海道新幹線は……わかりません(苦笑)
投稿: 社長 | 2015年5月30日 (土) 12:49
150メートルレール輸送が開始してもうすぐ一年ですが、行先のところで、本文に相模貨物とあるのですが今でもまだあるのでしょうか。
投稿: 飛幡人 | 2016年1月31日 (日) 00:36
飛幡人さんこんばんは
ご質問の件ですが、2015年3月改正で150mレール輸送開始して以降、50mレールは静岡タと東京タのみで、本日までの間に相模貨物行は運行されていないと思われます。
2014年11月までは、相模貨物行があり、深夜に線路閉鎖後、軌道モーターカーで西湘貨物→鴨宮の小田原保線区へと輸送していました。
http://2nd-train.net/topicsphotos/id/656/
私は深夜帯の輸送は見たことがありませんが、鴨宮の保線区内に緑色のチキ5500形(黒崎駅常備)3両編成が留置されているのを、下りのぞみ号の車窓から見たことがあります。
投稿: 社長 | 2016年1月31日 (日) 20:41