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2018年1月18日 (木)

★台湾製糖★橋頭糖廠の保存スイッチャー(日立編)

前回の続きです。2016年のゴールデンウィーク、台湾到着初日の午前中は高雄の保存車を見学し、美麗島の交差点近くにある中国料理屋で昼食後、午後はMRTに乗車して橋頭糖廠駅を目指しました。

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この日は日曜日で貨物列車の運行や専用線の入換は期待できませんので、保存車巡りに決めたわけです。

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駅前には、「戀戀五分車」というサトウキビ輸送用貨車を改造した車両が留置されていました。五分車の五分とは「五分五分」と同じ半分という意味で、何の半分かというと国際標準軌である1,435mmの半分、つまり軌間762mmのナローゲージのことですね。看板に「有機・樂活・美食・咖啡」とあるので喫茶店なのでしょうか。営業している雰囲気ではありませんが。

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5分ほど歩くと、台湾糖業博物館の正面入口に到着。これは台湾製糖有限公司の橋頭糖廠跡地にオープンした博物館で、廃業後の工場内を見学することができます。産業観光というやつです。

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入って左手に進むと、日本でも見慣れたデザインのスイッチャーが貨車を連結して佇んでいました。そう、台湾製糖には日立製作所が合計61両の産業用ディーゼル機関車を納入しており、そのうちの2両がこの博物館に静態保存されているのです。

●日立HR-16C液体式ディーゼル機関車

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まずはこちらの機関車。L型エンドキャブの3軸ロッド駆動で、カウンターウェイトが車輪の外側に付いています。連結器はピンリンク式です。軌間762mm用とはいえ車体がだいぶ大きく感じられます。日本国内にも、ナローゲージ時代の小坂鉄道や茨城県の日立鉱山専用鉄道、三重県の近鉄(現三岐鉄道)北勢線、岡山県の下津井電鉄、愛媛県の別子銅山専用鉄道など、軌間762mmながら車体の大きな鉄道がいくつかありましたが、それらを想起させます。ナンバープレートが残っていて849と読み取れました。

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後位側から。自重は16tですが、ナローゲージ鉄道としては比較的長距離を高速で運転するため、軸受は円錐コロ軸受を採用しています。運転台は横向きに配置されていますが、ハンドル・レバー類が左右両側に対称に配置されており、左右どちら側からでも運転できるようになっていました。

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公式側から。ラジエーターも自重16トンクラスの機関車としては大型です。

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渡辺台帳によると、日立から台湾製糖へ納入されたHR-16Cは、1967年に45両、1969年に9両が計上されています。1967年の45両は、製造番号だけでなくNo.801~845と車番まで記載されているのですが、1969年のものは車番未掲載となっています。そこで、物証を元に特定してみることにします。

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こちらがNo.849の銘板です。日立の海外向け産業用ディーゼル機関車の銘板は楕円形で、国内向けの長方形とは異なります。製造番号は「HITACHI」と製造年「1969」の間にある陰刻を読み取る必要があるのですが、この車両は保存状態が良く、13090とすんなり読めました。渡辺台帳によれば1969年に納入された9両は、製番13052~13054の3両と13090~13095の6両で、この車両No.849が13090ですから、後続がNo.850~854、前はNo.846~848と特定することができます。まとめると、HR-16Cのリストは以下の通りとなります。

ロット 製造年 製造両数 製造番号 車番
1967 40 12874~12913 801~840
1967 12928~12932 841~845
1969 13052~13054 846~848
1969 13090~13095 849~854

※ロット3については、実際に実車の銘板に刻印されているのは1968年との説がありますが、
 真偽のほどは定かではありません。物証が無いと俄かには信じがたいですね。

日立評論第50巻第3号82ページによると、HR-16Cの諸元は、以下の通りです。

  • 名  称 : 日立HR-16C形液体式ディーゼル機関車
  • 形  式 : 3軸ロッド駆動エンドキャブ形
  • 自  重 : 16t
  • 軌  間 : 762mm
  • 全  長 : 5,400mm
  • 全  幅 : 2,200mm
  • 全  高 : 3,300mm
  • 軸  距 : 2,100mm
  • 車輪経 :  770mm
  • 連結器高さ:485mm
  • 最大引張力:5,333kg
  • 最高速度: 33.5km/h
  • エンジン : DH-24L (220PS/1800rpm)
  • 液体変速機:CB115-1
  • 空気圧縮機:C-400
  • 制御装置: 機械、電磁空気式非重連
  • ブレーキ装置:空気式ブレーキおよび手ブレーキ
  • 連結器 : ピンリンク式

資料には記載されていませんが、エンジンDH-24Lはその型式から三菱製のエンジンと判断できます。車輪径こそ、軌間1,067mm向けのディーゼル機関車のそれ(860mmまたは910mm)より一回り小さいですが、動力系は自重25~30tクラスの機関車とほぼ同じ出力のエンジンにDF115系トルクコンバーターの組み合わせを採用し、最高速度30km/h以上を担保しています。

●日立HR-30C液体式ディーゼル機関車

次に、機関区のはずれにポツンと留置されていた軌間1,067mmの機関車も見学。

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台鉄と糖廠の貨車輸送に使用されていた、言わば台鉄に連絡する台湾製糖専用側線の機関車です。こちらも3軸ロッド駆動のL型機で、アウトサイドフレームです。やはり車体の大きさが目を惹きます。ラジエーターがさらに巨大化しているため、全長もより長く感じられますね。軸受も同じくコロ軸受です。

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ご覧の通り、連結器は台鉄で採用されている柴田式自動連結器で、貫通ブレーキ用のホースも装備しています。いよいよ専用線のスイッチャーらしい姿ですね。ちょっと残念なのは、周囲の植物が邪魔であまり綺麗な角度からは撮れないことでしょうか。

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こちらもNo.13のプレートが残されていました。渡辺台帳によると、日立から台湾糖業(旧台湾製糖)へ納入されたHR-30Cは、1969年に4両、1981年に3両が計上されています。

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こちらがNo.13の銘板です。この車両も製造番号13082と読めました。渡辺台帳によれば1969年に納入された4両は、製番13080~13083ですので、ロット1は特定できます。またロット2については、製造番号が製作指示番号+追番方式に改められた後の製造となるため、製作指示番号20751をベースにシーケンシャルナンバー2桁が後ろに付くことになります。まとめると、HR-30Cのリストは以下の通りとなります。

ロット 製造年 製造両数 製造番号 車番
1969 13080~13083 11~14
1981 2075101~2075103 15~17

※ロット2については、日本国内向けであれば屋根形状が丸屋根から台形屋根に
 設計変更された後の製造となりますが、現物の屋根形状がどうなっていたのか興味深いです。

日立評論VOL.52 NO.8 90ページによると、HR-30Cの諸元は、以下の通りです。

  • 名  称 : 日立HR-30C形液体式ディーゼル機関車
  • 形  式 : 後部運転室、ロッド駆動
  • 自  重 : 運転整備重量30t/空車28.5t
  • 軌  間 : 1,067mm
  • 全  長 : 7,500mm
  • 全  幅 : 2,600mm
  • 全  高 : 3,500mm
  • 軸  距 : 3,200mm
  • 車輪経 :  910mm
  • 最大引張力:9,000kg
  • 最高速度: 32.9km/h
  • エンジン : 三菱12DH20TL (515PS/1800rpm)
  • 液体変速機:NIIGATA-TWINDISC CBF138
  • 制御装置: 機械式(エンジン制御)、電磁空気式(逆転器・トルクコンバータ)
  • ブレーキ装置:27LA自動貫通ブレーキ、手ブレーキ
  • 連結器 : 柴田式自動連結器

車輪径は、日本国内向けの産業用ディーゼル機関車や国鉄・私鉄・臨海鉄道向け液体式ディーゼル機関車の標準である860mmより大きい910mmです。これは、旧型国電や0系新幹線と同じ値です。なぜ標準品を採用しなかったのか興味深いですね。エンジンはこれまた三菱製で、762mm向けのHR-16Cのものと部品レベルでの互換性があるとのこと。動力系に採用された、500PSクラスのエンジンとDB138系トルクコンバーターの組み合わせは、45~60トンクラスの大型産業用機関車と同じものです。この機関車は台鉄の駅と糖廠の間で貨車連絡に使用されていたものですので、牽引力重視の設計なのかもしれません。

ところで、液体変速機のメーカー名が新潟ではなく新潟-ツインディスクになっていますが、これは輸出品だからでしょうね。CBF138(DB138およびその後継品を含む)は、元々新潟鉄工所(→新潟コンバータ)が米国ツインディスク社からライセンス供与を受けて製造しているものです。日本国内ではNIIGATAで通りますが、第三国で販売する製品にはTWIN DISC社の名前を入れないといけないのでしょう。現在でも、日立ニコトランスミッション(旧新潟コンバータ)社製のDF115・DB138系の液体変速機の銘板には、「LICENSED BY TWIN DISC,INC.USA」の表記があります。

<つづく>

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