カテゴリー「コラム」の6件の記事

2016年1月 9日 (土)

青函トンネル風圧問題解決に向け、貨物新幹線案が再浮上

 今年は元旦から貨物ファン注目のニュースが報じられました。北海道新聞の1面トップに掲載された、以下の記事です。

『貨物新幹線 開発検討』 国交省など20年代実用化

 国土交通省とJR北海道、東日本、貨物の3社などは、コンテナを直接載せる方式で、最高時速200キロで走行できる新幹線仕様の貨物列車を開発し、3月開業の北海道新幹線新青森―新函館北斗間(約149キロ)に走らせる方向で検討を始めた。いわば「貨物新幹線」と言える構想。北海道新幹線の高速化が可能になり同区間の所要時間を18分短縮できる上、貨物輸送のスピードアップにもつながる。積み込むコンテナの左右に「側壁」を設けて対向車両の風圧を防ぐ。新年度以降、車両の開発を急ぎ、2020年代前半の実用化を目指す。

 導入を目指す貨物新幹線は、東北・北海道新幹線で使うE5系、H5系などの車両をベースに開発する。在来の貨物列車は線路幅1067ミリの「狭軌」だが、貨物新幹線は新幹線と同じ同1435ミリの「標準軌」とする。車両幅を広げることで、貨車上の左右に頑丈な側壁を設けることが可能になり、すれ違う際の風圧でコンテナが荷崩れする恐れを大幅に軽減できる

 運行は5トンコンテナを約100個積める20両程度の編成とし、新青森側と新函館北斗側に建設する積み替え基地で、専用クレーンを使って「在来線」「新幹線」双方の貨物列車間でコンテナを積み替える構想だ。

 北海道新幹線は、青函トンネルなど約82キロに及ぶ在来線貨物との共用区間で、貨物の荷崩れ防止などの観点で、最高時速は当面、通常の260キロよりも遅い140キロに制限される。貨物新幹線導入後はこの速度制限も緩和され、新幹線は260キロ、貨物新幹線も従来の110キロより格段に速い200キロで走行できる。

 これにより新幹線の新青森―新函館北斗間の所要時間は最短1時間1分から43分となり、東京―新函館北斗間は開業時の最速4時間2分から3時間44分になる計算。30年度までに予定される札幌延伸時も東京―札幌間を4時間台で結ぶことが確実となる。貨物新幹線もコンテナの積み替え時間を加えても、新青森―新函館北斗間の所要時間が2時間半から1時間40分程度に縮まる

 新青森―新函館北斗間の貨物列車の高速化は05年度から、コンテナを載せた貨車ごと新幹線用車両に載せる「トレイン・オン・トレイン(TOT)方式」が本格的に検討されてきたが、台車部分の重量が大きすぎ、重心も高くなるなどの難点が指摘されていた。新方式の事業費は新幹線仕様の貨車開発や積み替え基地建設費などで800億~1千億円が想定される。

 国交省やJRは、こうした貨物新幹線構想とは別に、北海道新幹線の開業から2年後の18年春から、貨物列車とのすれ違いがない時間帯を設けて、共用区間も時速260キロで走行する最速新幹線を1日1往復だけ導入する方針だ。

また3面には次のような記事もありました。

『旅客・物流 時短に期待』 貨物新幹線 事業費確保が課題

<解説> 国土交通省やJR北海道などが、従来の「トレイン・オン・トレイン(TOT)方式」の検討が行き詰る中、それに代わる新幹線仕様の貨車の開発を検討し始めたのは、北海道新幹線を高速化しようという意欲の表れだ。3月の開業後当面は走行速度が制限されるが、2030年度までに予定される札幌延伸に向けた利便性向上だけでなく、物流面でのプラス効果も期待できる構想で、関係者の期待も高まりそうだ。 国交省関係者によると、新貨車開発はTOT方式の研究が本格化する前にも案としてあったが、コンテナの積み替えにTOT方式より時間がかかるとの懸念から、いったんは選択肢から消えていた。 だが、関係機関があらためて新貨車開発の可能性を検証した結果、在来線の貨物列車を横付けし、1両あたり5個、最大20両のコンテナを一斉に持ち上げて水平移動する大型クレーン施設を整備することで、積み替え時間は20分程度で済むことが分かり、有力案に浮上した

 この貨車が導入され、在来線貨物列車との共用区間がなくなれば北海道新幹線新青森-新函館北斗間の所要時間は18分程度短縮でき、沿線自治体などが求める東京-新函館北斗間の「4時間切り」、東京-札幌間の「5時間切り」も達成できる。  東京-札幌間の貨物列車も、新青森-札幌間を新幹線化すれば、現行で17~19時間の所要時間が4時間半程度短くなり、首都圏に運ばれる道産農産物などの速達性も増す。 ただ、事業費は800億~一千億円とみられ、財源を確保できるかが大きな課題だ。巨額の資金が必要なだけに実現には道民の理解も不可欠で、道や道内経済界を含めたオール北海道の支援体制構築が求められる。(高橋俊樹)

 今回の案、内容的に真新しさはありませんが、国交省とJR3社が合意しているという点は、一歩前進でしょうか。貨物列車の最高速度がなぜ260km/hではなく200km/hなのかについては、技術的な根拠はないと思います。理由は単純で、全国新幹線鉄道整備法第二条において、主たる区間を時速200キロ以上で走行する鉄道を新幹線鉄道と規定しているためでしょう。最高速度が200km/hを超えないと法令上新幹線ではなくなりますから。現時点では260km/hで運行するための検証をしていないので、とりあえず200km/hとしたのでしょう。

しかし、夢は膨らみますね。東北新幹線仙台~盛岡間で運行されている営業列車は、わずかに1時間あたり上下各4本のみです。盛岡以北ではもっと減ります。このため個人的には、貨物新幹線を仙台まで運行してほしいですね。いま既に存在する設備を使うなら、北海道方面からやってきた貨物新幹線は、仙台駅でスイッチバックして、新幹線総合車両センターへの連絡線を通り高架線から地上に降りて、さらにスイッチバックして保線基地(仙台新幹線保線技術センター)へ行けば、在来線の東北本線岩切駅から分岐する仙台レールセンターへの狭軌の線路がすぐ隣まで来ています。2015年現在、仙台新幹線保線技術センターでは、在来線経由で運び込んだロングレールを新幹線軌道側の保線車両に積み込んでおり、現状でも既に一部の線路は荷役の都合で3線軌条化されております。レール以外も荷役できるように改修できるならば、新在連絡線や積み替え設備を建設するために用地買収から始めるよりハードルは低くなりそうです。用地については、保線基地内の線路を整理する以外に、奥の手?もあります。実は、今年4月から始まる新日鐵住金八幡製鉄所からJR東日本向けの150mレールの輸送、JR東日本側の着駅の一つに岩切が指定されているのです。この150mレール輸送が(在来線向けも含めて)本格的に軌道に乗れば、仙台レールセンター内のロングレール溶接設備やレール荷役設備そのものが不要になり、用地確保の目途も立ちます。なお岩切地区に関しては、東北本線東仙台-岩切間の南側に仙台貨物駅(旧 宮城野貨物駅)を移転し、跡地を広域防災拠点に転用する計画があり、買収用地の検討も進んでいます。したがって、もし新在連絡設備を新設するなら、こちらもアリですね。

東北新幹線の軌道は、国鉄時代に開業した大宮-盛岡間は許容軸重17tで建設されていますが、盛岡以北の区間が貨物輸送に耐えられるのかどうかが気になるところです。 今年の夏頃にJR貨物のとある幹部の方とお会いする機会がありに水を向けてみたところ、東北新幹線・北海道新幹線(青函トンネル含む)はすべて許容軸重17tで建設されているので問題ないようです。

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2014年10月22日 (水)

◆レイルマガジン2014年12月号◆蒸気機関車2014読了

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■終着駅に向けてD51 498が最後の力走  2010年5月5日、上牧-水上

 今週20日月曜日、早売り店の店頭で立ち読みした瞬間に、レジに直行しそうになり思い留まった、レイルマガジン2014年12月号。

  • 釜石線<SL銀河>撮影ガイド
  • 魅惑のドイツ蒸気機関車
  • 図説 蒸気機関車基礎講座
  • 最後のファイアレス
  • 関西本線四日市周辺の貨物列車
  • 国鉄交流電車711系
  • 貝島のコッペパン(貝島炭鉱専用鉄道)
  • とさでん交通1形

これだけ興味深い話題が揃っていれば即買いするところですが、巻末の読者投稿欄に写真が採用されたので買わずに待っていたら(笑)、公式発売日翌日の本日22日に届きました。早いですね。

 さて今回興味深いのは、相互リンク先の南野哲志さんの四日市の記事(西宮後さん撮影の写真付き!)はもちろんのこと、一番情報がほしかったドイツ国内の動態保存機の撮影記ですね。私も、2012年ゴールデンウィークの訪独時に、ケルン中央駅で夜ホテルへ戻るために列車を待っていたら、Dampflok BR01(01形蒸気機関車)の牽引する団体臨時列車に遭遇しましたが、事前情報がなかったのと、夜だったため、見るだけになりました。こういった列車は、いつか撮ってみたいと思っています。

●最後のファイアレス

 ファイアレスというのは、火力を必要とせず圧縮蒸気の力で走行する機関車=無火機関車のことです。Y製鐵所専用鉄道くろがね線でもかつて緩急車として使用されていたことがあります(以前の記事を参照)。レイルマガジン誌では言及されていませんが、ドイツ語では「Dampfspeicherlokomotive(ダンプシュパイヒャーロコモティフェ)」が正式名称で、直訳すると「蒸気貯蔵機関車」です。無火機関車は、Feuerloselokomotive(フォイヤーローゼロコモティフェ)です。それぞれのキーワードで検索すれば、ネット上に色々見つかると思いますのでお試しください。

 さて本題です。本当に「最後の~」なのかどうかはともかくとして、写真を見ての第一印象は、

「あれ!?どっかで見たような…」

探してみると、Eisenbahn-Kurier 2012年8月号のpp52-57に特集記事があり、その中に今回紹介された機関車も掲載されていました。

化学工場の専用線のため、レイルマガジン誌では社名を公表しないことを前提に取材許可が下りたとのこと。これが日本国内であれば暴露するのは控えた方がよいと思われますが、ドイツの鉄道趣味誌では既に実名・写真入りで大々的に特集が組まれていることや、名前を公開したところで、ドイツ語で突撃アプローチできる日本の鉄道マニアはほとんどおらず問題になることはないと思われるため、プロフィールを記載します。記事中で2両あるとされている現役機関車は以下の通りです。

  • Nr. 2, 1969年LKM社製, 製造番号219188, 車軸配置C
  • Nr. 4, 1985年Meiningen社製, 製造番号03080, 車軸配置C

レイルマガジン誌に写真付で紹介されているのが上の2号機です。下の4号機はメーカーは異なりますが、WEB上で写真を何枚か確認した限り、少なくとも外観については2号機とほとんど同じようです。

これらの無火機関車を使用している事業者は、ドイツ東部のザクセンアンハルト州に工場を構える「Sodawerke Staßfurt GmbH」で、ソーダ工場の名の通り、炭酸ナトリウムをはじめとするナトリウム化合物を生産しています。ドイツ国内におけるナトリウムのシェアはおよそ30%とのことで、結構大きい会社のようです。

 最後に一つ耳寄り情報を。他の地域では、無火機関車が公道を渡る踏切を横断して社有地外へ出てくるケース(Herne の Sasol solvents Germany GmbH)や、動態保存機とされているスイスの例(Winerthur DLM AG)もあるため、同型機を撮るだけであれば、わざわざハードルの高い化学工場へアプローチしなくてもよいのかもしれません。もちろん、今回の名取編集長の尽力には敬意を表します。m(_ _)m

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2013年1月21日 (月)

プッシュプルトレインに関する雑感

 今日は月刊鉄道雑誌の発売日。ちょうど仕事の都合で午前中外出する機会があったので、昼休みを利用して本屋で物色。

鉄道ピクトリアルアーカイブスコレクション24「貨物輸送1960~70」は即購入するとして、目を惹いたのがレイルマガジンに掲載されていた岩成政和氏によるプッシュプルトレインの解説です。鉄道用語が拡大解釈されて本来の意味とずれてくるというのは時々ある話で、ものによっては私も気になることがありますが、原則論と趣味的な観点のバランスがよく、興味深い記事になっていました。

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■Wendezug von DBAG  27-4-2012, DuisburgHbf - EssenHbf

 上の写真は、ドイツ鉄道のインターシティです。編成の先頭(左写真)にSteuerwagen(シュトイアヴァーゲン=制御車)が連結され、最後尾(右写真)に連結された101形電気機関車を遠隔制御し、160km/hの猛スピードで推進運転しています。

欧州ではこのように、ドイツやスイスを中心に幹線の優等列車(インターシティ)から亜幹線の各駅停車(レギオナルバーン)に至るまで、プッシュプルトレインが一般的です。最近では電車や気動車など動力分散方式の編成が増えていますが、輸送力をより柔軟に調整できることから、現在でもプッシュプルの編成をよく目にします。岩成氏も言及しているように、このような運転形態の列車は、振り子のように行ったり来たりすることからPendelzug(ペンデルツーク)と呼称されています。ただしドイツではこの用語の指す範囲が広く、特定の区間を往復しているシャトル列車のようなものも含まれることがあるため、より限定的な意味で表現されるときにWendezug=ヴェンデツークと呼称されることが多いようです。

Wendezugが登場した第一の理由は、頭端式(行き止まり式)のターミナル駅が多い欧州においては、到着→発車時の機関車付け替えを省くことが、列車の円滑な運用を行ううえで重要であるからにほかなりません。日本でプッシュプルトレイン(…と鉄道趣味者から呼称されるもの)が成立するのは、機回しができないあるいは面倒だとか、橋梁の重量制限がある、といった地上設備の制約が主な要因になっています。ターミナル駅の構造も地上設備の制約といえなくもないですが、プッシュプルにしなければならない理由が日本のそれとは大きく異なっている点に注意する必要があります。

 本来のプッシュプルトレインは、動力車(機関車や運転室付の電車・気動車)が付随車を伴っている編成を暗黙の前提として(このあたりがいかにもヨーロッパ思想)、編成の反対側(運転室の無い側)にも運転室を設けて前後に走れるようにした列車(編成)のことです。日本の法規には明確な規程がないかもしれませんが、実は日本工業規格にはっきりと定義されています。JISハンドブック鉄道2012には、「プッシュ・プル列車」について次のように示されています。

一方に機関車,他方に制御車を配置した列車で,
編成の組換えなしにいずれの方向へも運転ができる列車。

この観点から、プッシュプルトレインという用語の意味は、日本に持ち込まれる際に変質したのではなく、日本で使用されるうちに拡大解釈されるようになったというべきでしょうね。

さらに付け加えるなら、ドイツでも客車の前後に機関車を連結し、機回し無しで往復できるようにした編成もまたWendezugと呼ばれている現実を踏まえる必要があります。

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■Wendezug mit Zweiloks,  1-5-2012,  Koblenz

前述のとおり、電車や気動車が増えた結果、機関車が余り気味のドイツでは、客車に制御機能を持たせるくらいなら、あまった機関車を制御車代わりに連結してやれということで、上のようないわゆる日本風プッシュプルトレインも運行されています。こういった編成は、亜幹線のレギオナルバーン・レギオナルエクスプレスを中心に時折インターシティにも見受けられます。インターシティ用客車を101形電気機関車でサンドイッチした編成を見たこともあります。かような実情に鑑みれば、JIS規程の「制御車」を「制御機能を持った車両」と拡大解釈し、機関車2両で客車や付随車を挟んだ「プッシュプルトレイン」も許容するのが自然な流れでしょう。

 言葉は生き物ですから、時代が変われば意味・用法が変質するのは避けられません。例えば「独壇場(どくだんじょう)」という単語がありますが、これは元々「独擅場(どくせんじょう)」でした。手へんを土へんに誤用したことがきっかけで広まり、現在では国語辞典にも載っている単語です。要は、本来の意味・用法を理解しているのかどうかが重要なのであり、分かったうえで使っていればそれほど大げさな議論するような問題でもないと考えます。

ラテン語ベースで欧州各国の人々には馴染みやすい筈のエスペラント語が、新語の発明を認めないという性質ゆえに、言語としての汎用性を失い普及していないのも、言葉本来の性質を殺していることに因ると私は考えます。国語学者が何と言おうと、役所がどのような法令を定めようと、鉄道趣味者の間で広く共有されている単語(ないし新しい意味・用法)は、認めていくしかないでしょう。欲を言えば、本来の意味が共有されているという前提は欲しいところですが。

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2011年6月 1日 (水)

【衣浦臨海-JR貨物-三岐】フライアッシュ輸送の真実

 5月に発売されたレイルマガジン2011年7月号、本日書店で立ち読みしましたが、5分もしないうちに本を片手にレジに向かってしまいました(笑)

実を言うと、RMは毎月購入しているわけではありません。今回も、岩成さんの遠州鉄道の解説記事にビビッときたものの、いやいやこれだけでは買うまいと一時は思い留まりました。しかし、相互リンクさせていただいている南野さんの記事

「三岐鉄道開業80周年 徹底解説、三岐鉄道!」

を読み、ギブアップ。即購入してしまいました。

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以前ブログ上で、西武顔の電車があまり好きでなはないとカミングアウトしましたが、そんな私でも思わず購入してしまうほど、濃い内容になっています。石炭灰(フライアッシュ)輸送の貨物列車のダイヤが外的要因で変更される件についても詳報があり、とても読んだだけではすべてのパターンを覚え切れません(笑) じっくり読んで頭の中を整理する必要がありそうです。貨車や機関車の回送のダイヤについても言及されており、大変重宝しますね。

 

●鉄道ファン2011年7月号には、郷田恒雄氏による残念な記事が…

 書店でざっと立ち読みしてみたところ、同じ日に発売された別の雑誌にも、碧南市-東藤原間の石炭灰(フライアッシュ)輸送に関する「車扱列車を見てみよう! 4」という記事がありました。内容は、このうえなく残念な仕上がりでしたが。

致命的な部分を一点指摘させていただくならば、次の箇所でしょうか。

thunder今回の車扱貨物では、東藤原から碧南市に向けて、火力発電所内の排煙脱硫装置で使用する炭酸カルシウム、碧南市から東藤原に向けて、コンクリート混和材として再活用される石炭灰(フライアッシュ)の双方向輸送が実施されており、

この記述によって誤解が広まることを懸念します。碧南市から東藤原へ貨車輸送しているフライアッシュはコンクリート混和材ではありません。そもそもコンクリート混和材を必要としているのは生コン工場であって、セメント工場ではないのです。セメントとコンクリートの区別がついていないのでしょうか(苦笑) 困ったものです。

百歩譲って、セメント工場で使用するセメント混和材(フライアッシュセメントの原料)だと好意的に解釈したとしても、やはり無理があります。というのも、以前弊ブログのコラムに書いたように、日本国内で出荷されているセメントは「普通セメント」「早強セメント」「高炉セメント」の3品種だけで全出荷量の95%以上を占めており、フライアッシュセメントの出荷量は全体の数%にも満たない微々たるものなのです。ですから、このような品種の原料を、鉄道貨車で土日も休まず大量輸送する必要などないのです。

それでは、フライアッシュはいったい何の原料として利用されているのでしょうか。これを理解するには、セメント生産プロセスの基本をおさえておく必要があります。

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●セメントの原料

 セメントの4大原料は?と聞かれてすぐに答えられる方には、もう解説の必要はないでしょう。「石灰石」「粘土」「珪石」「鉄原料」ですね。この4つを粉砕・混合して焼き固めたのがセメントクリンカであり、これを粉砕して石膏を混ぜたものがセメントです。(ちなみに、これに砂利や砂などの骨材、さらに必要に応じて混和材等を混ぜて水で練ったのが生コンになります)

近頃は、増え続ける産業廃棄物の処理が課題になっており、国の政策的な後押しもあって、セメント業界でも2011年現在ではすべてのセメント工場で原料・燃料として産廃を受け入れるようになっています。原料のうち、石灰石の主成分は炭酸カルシウムですから産廃で代替することができませんが、粘土の主成分は二酸化珪素(つまり石と同じ)ですから、代替が利きます。量として多いのは、発電所から排出される石炭灰(フライアッシュ)と、自治体の下水処理場・浄水処理場などから出てくる汚泥、建設現場から排出される土壌、ごみ焼却場から排出される焼却灰などです。特に石炭灰は、発電所の炉で脱硫の際に加えた石灰石の成分であるカルシウムが含まれているため、セメント原料には好適です。現在では、粘土のほとんどは産廃で代替されているのが実情なのです。

●数字でみるFAの鉄道輸送

 セメント協会の資料によれば、セメントを1t生産するのに必要な粘土の量は200kgといわれています。そして、粘土代替の産廃のうちフライアッシュ(以下、FAとする)の占める割合は、1/3~2/3程度といわれています。したがって、セメント1tを生産するのに、原料としてFAがおよそ70~130kg使用されていることになります。原料/製品の質量比で表現すると、7~13%ということですね。

さあ、これを踏まえて、碧南市→東藤原間のFA輸送をみてみましょう。まず輸送されているFAは、35t積貨車16両編成で1日1本ですから、1日あたりの輸送量は

35×16=560t

になります。いっぽう、太平洋セメントのホームページにもあるとおり、藤原工場の年間セメント生産量はおよそ215万t(平成19年度実績)です。単純計算で1日あたり5900t弱のセメントを生産していることになります。5900tのセメントを生産するのに必要なFAは、前述の値を用いて 

5900×(0.07~0.13)≒410~770t

となり、貨車で受け入れている560tにかなり近い値になることがわかります。

どうです? こんな風に計算してみると、FAは粘土代替のセメント原料として利用されているという紛れもない事実が、数字のうえでも理解できると思います。

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2011年3月 1日 (火)

【鉄道ファン2011年4月号】郷田恒雄氏の連載記事を検証する

 ここ10年ほどめっきり購入機会の減ってしまった交友社の『鉄道ファン』。元国鉄大宮工場長の久保さんや、鉄道友の会の岡田さんや福原さんの記事目当てでかろうじて立ち読みさせてもらっていますが、今回は『鉄道ファン2011年4月号』の連載、

   「全国の現役機関車をめぐって
    民営鉄道の電気機関車・ディーゼル機関車はいま… -その39-/郷田恒雄」

について検証してみようと思います。

 

春日井と南延岡の日車35tは同型機ではない

 著者の郷田恒雄氏によると、春日井の製紙メーカーの専用線で使用されているスイッチャーと、南延岡の化学メーカーの専用線で使用されているスイッチャーが同型だそうです。そこで、実際に同型かどうか検証してみましょう。

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■春日井(製紙メーカーO社専用線)の35t機(左)と、南延岡(化学メーカーA社専用線)の35t機(右)。

どちらも日本車輌製造製のセミセンターキャブの35t機ですが、クリックして拡大してよく観察してみると…

まず台車が異なります。春日井のものは鋳鋼製の日車バーバー台車ですが、南延岡のものは組立溶接台枠です。次に、ボンネット側面の点検蓋に着目してみると、その枚数が異なります。春日井のものは8枚ですが、南延岡のものは9枚です。さらにキャブに着目してみると、前面窓の大きさ・形状が異なりますし、屋根の形状も異なります

さらに細部まで検証・比較してみると、こうなります。

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■上記2両のスペック比較表

結論としては、どう考えても同型機とは言い難いですね。しいて共通点を挙げれば、どちらも車体が青っぽい(笑)

 

吉原の元・伏木海陸の日車は15t機ではなく20t機

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■吉原の製紙メーカー専用線で活躍中の、日車15t機(左)と20t機(右) 2009年

 スイッチャーの自重は、車体にその表記がない場合、調べるのに少々困難を伴います。共通車体の自重違いが少なからず存在しているからにほかなりません。日車の場合、15t機と20t機は車体が共通ですから、慎重な調査が求められます。たとえば協三工業のように、製造番号の上2桁が自重を表しているようなものを除けば、それなりに信頼のおける1次資料(メーカー資料、ないしそれをベースに作成された台帳等)を参照しなければ、正確なところは分かりません。

 郷田氏の記事では、上記2両はどちらも15t機とされています。しかし、鉄道ピクトリアル2011年3月号の記事にあるとおり、右側のスイッチャーは15t機ではなく20t機です。出典について興味のある方は、当該記事をご確認ください。郷田氏の記事には銘板調査をしていない旨の記述がありますが、左は昭和45年製の製番2807、右は昭和44年製の製番2868で、これも鉄ピクの記事には掲載済です。

 

キャブ側面の番号の意味

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 前掲の左側のスイッチャーに標されているこの管理番号については、先頭2桁が購入年(導入年)を表しているというのは、昔からのスイッチャーファンにとっては有名な話ですね? 66であれば1966年、89ならば1989年です。これまでの日通のスイッチャーを観察してみると、新製配置車両のみならず、中古購入分についても同じルールで付番されているようです。したがって、銘板に刻印された製造年とは必ずしも一致しません。

ともあれ、日通の社名・社紋が標されている車両を見て、そこに正体不明の番号が書いてあったら、日通が何かを管理するために標した番号ではないかと考えるのが自然な気がしますが。著者の郷田氏が「国鉄/JRの移動機」だと推測した理由がいま一つよくわかりません。国鉄の移動機は付番ルールがまったく異なりますし…。

 

「継走」ではなく「継送」

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■670レに連結されて春日井を出発したワムは、稲沢で3460レへと継送される。

 連載開始当初から気になっていたのが、コレ。もちろん人間のやることにはミスはつきものですから、たまたま漢字変換を間違えたのかもしれません。しかし訂正されないところを見ると、「継送」という用語を知らないのではないかという疑いすら出てきかねません。良い機会なので、ここで整理してみましょう。

  • 継走
    数人が一組となり、各自が自分の分担距離を走り、次々とバトンを受け渡しして走ること。リレー。   -出典:『日本国語大辞典』小学館
     
  • 継送
    1) 物などを次から次へと順をおって送ること。順送り。江戸時代、街道宿駅での貨客の輸送方法で、伝馬宿ごとに人馬を替えて送ること。   -出典:『日本国語大辞典』小学館
    2) 貨物を発基地・着基地間の途中駅において、列車から他の列車へ、貨車、またはコンテナ単位で連結して前途を輸送すること。   -出典:『鉄道貨物輸送用語辞典』 社団法人全国通運連盟-

鉄道雑誌のバックナンバーで貨物関係の記事をチェックしてみても「継送」で統一されており、鉄道貨物の世界で「継走」という用語が使われているのを見たことがありません。

 仲間内のコミュニケーションやインターネット掲示板でのちょっとした間違いであれば笑い話で済むようなことではありますが(笑)、雑誌に記事を載せるならもう少し言葉の使い方には慎重になっていただきたいものです。

 というわけで今回は、「上記の問題箇所が可及的速やかに訂正されることを願わずにはいられない」、と郷田流に締めさせていただきます(笑)

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2010年3月24日 (水)

【コラム】袋セメントの鉄道輸送

 先日のスイッチャーに関する記事の中で、秩父鉄道のスム4000形貨車が登場しました。せっかくなので、「袋セメントの鉄道輸送」について、備忘録的に記しておこうと思います。

一般に、セメント業界の物流面にスポットを当てた記事が鉄道趣味誌に載ることは、滅多にありません。きちんと取材をして調べなければ分からないことがほとんどですし、仮に記事を書いても読者の興味をひくのが難しいからでしょう。(それ以前にこの手の記事は、電気車研究会の『鉄道ピクトリアル』か、吉岡心平の貨車ホームページ、ないねん出版の『鉄道番外録』以外では、滅多に採用されない気がしますが…笑) しかしそんな隙間ネタこそ、当ブログの十八番です。

●バラセメントと袋セメント

 さて、袋セメントの輸送について説明する前に、セメントの荷姿について説明しておこうと思います。セメントを輸送する際の荷姿には、「バラ」と「袋」があります。「バラ」とは「バラ撒き」の略で、バラ輸送とは粉体を専用の容器に入れて輸送することです。「」は、包装設備で粉体を袋詰めしたものです。他にも、フレコン(フレキシブルコンテナ)や缶など荷姿は色々あるのですが、鉄道輸送には直接関係ないので省略します。

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■秩父鉄道三峰口駅付近に保存されているスム4000形4023号  2009年

バラの鉄道輸送には、タキ1900形や12200形、ホキ5700形といった専用貨車が使用されるため、鉄道ファンの注目度も高くなっています。これに対し、袋の場合は有蓋車での輸送となるため、外見では積荷が分からず、セメント輸送として注目されることはほとんどありません。もちろん、かつての秩父鉄道のように、テキ100形やスム4000形など、袋輸送専用の貨車を用意している私鉄の場合は大いに注目されますが、輸送そのものはあまり長続きしませんでした。一般に、わざわざ袋詰めして輸送するのは小口の需要家へ届けるためですから、輸送手段としては、鉄道貨車よりも小回りの利くトラックの方が適しています。

そんな背景もあり、鉄道の世界ではすっかり影を潜めている袋セメント輸送。しかし、実はまだ現存している、というのはあまり知られていません。なぜでしょうか。これを理解するには、二つの前提知識が必要になります。

●一次輸送と二次輸送

 まずセメントメーカーの物流について把握しておく必要があります。これについては、セメント協会のホームページに簡潔にまとめられています。

下のリンクで、「物流の合理化」の下の方にある「■セメントの物流プロセス」欄を参照。
http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc6.html

工場で生産されたセメントは、まず各地に点在する出荷場所(SS:サービスステーション)まで、船舶・鉄道・トラックなどで輸送されます。これは自社内在庫移動の一種で、一次輸送と呼ばれます。SSは、セメントを貯蔵するためのサイロを2~3基備えており、常時2~3品種が出荷可能な状態になっています。SSは、かつては包装所と呼ばれ、バラセメントを袋詰めするための設備を有しています。大規模な一部のSSは混合設備を有し、混ぜものを添加して多様な品種を作り出せるところもあります。ちょうど工場の仕上工程の一部をSSが担っているようなイメージです。

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■某県内にあるセメントメーカーのSS(サービスステーション)。
 サイロの下でセメントを積込み、トラックで出荷。

SSから先は、必要に応じて生コンメーカーなど需要家へ届けられます。生コンメーカーへはバラ車での輸送が大半だと思いますが、小口需要家へは袋詰めしたものを届けることになります。これらは販売のための輸送で、二次輸送と呼ばれます。

●セメントの品種と出荷量

 次は、セメントの品種について。セメントにはさまざまな品種がありますが、出荷量が多いのは普通セメント()、早強セメント()、高炉セメントB種(BB)の三種類です(カッコ内はJIS品種名)。この三品種だけで、全出荷量の95%以上を占めます。セメント協会の統計よる内訳は、Nがおよそ70%、Hが5%、BBが20%という割合になっています。

●なぜ袋を鉄道輸送する必要があるのか?

 先程、SSにはサイロが2~3基あると述べました。統計の通り、出荷する品種の大半はN、H、BBのいずれかですので、1品種を1サイロに貯蔵するとしても、3基あれば十分需要に応えることができます。では、これ以外の品種を出荷する場合は、どうするのでしょうか。

特殊セメントの出荷量は全体の5%に満たないため、わざわざ各SSにサイロを設けて常備しておく必要はありません。更に上で述べたとおり、大抵のSSには混合設備がありません。つまりSSでは、特殊セメントの貯蔵も生産もできないわけです。したがってこのような品種は、工場から直接需要家へ二次輸送することになります。量が少なく小口のため、袋の割合が高まります。SSの拠点数は、一社あたり百から数百箇所にのぼり、日本中にそれなりの密度で点在していますが、工場は数が限られますので、当然需要家までの二次輸送の距離は長くなります。長距離で、かつ小口輸送。このフレーズ、どこかで聞いたことはありませんか?

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つまりコンテナ輸送ですね。私の知っているところでは、兵庫県からはるばる関東まで輸送している事例があります。もっともセメントメーカー側は、輸送を運送会社に委託していますので、鉄道を利用しているという意識は無いかもしれませんが。

 専用貨車によるセメント輸送は、2006年3月のダイヤ改正で激減。2008年3月改正以降は、東藤原-四日市間を残すのみとなりました。しかし、袋セメントをはじめ、製品の一つであるタンカル(炭酸カルシウム粉末)や石灰石骨材、そして原料用の石炭灰や汚泥・建設廃土などの輸送には、地味ではあるものの今でも鉄道が利用されています。今後も、こうしたセメント業界の物流の動向に注目していきたいと思います。

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